令和4年決算特別委員会 総括説明・総括質疑

2022年10月04日 江口じゅん子区議

今後の子ども政策の考え方について

江口 じゅん子

日本共産党の総括質疑を始めます。

まず、今後の子ども政策の考え方であるグランドビジョンが、今般示されました。ビジョンの基本的考え方は、年少人口の減少に合わせ単に支援や施設を縮小せず、在宅子育て支援拡充をベースに、子ども・子育て関連施策全体で必要な施策に組み替えるとあります。保育では、区立園を令和十六年度までに四十六園から三十九園に減らす統廃合計画も示されています。

グランドビジョンを議論する前提として、私は、まず、保坂区政の最重要課題である保育の質を守りながらの待機児解消はどこまで実現できたのか、検証が必要の立場で伺います。

区は、令和二年度から保育待機児解消を実現としています。その要因は二つです。一つ目は、認可を中心とした精力的な保育整備。保坂区政一期目から現在まで、百四十五か所、九千四百七十八人分の認可園を整備してきました。全庁挙げての精力的整備、改めて評価します。

二つ目は、令和二年度から待機児の数え方を国基準に変更したことです。変更によって、それまで待機児でカウントしていた育休の延長者、企業主導型保育事業所の利用児童は待機児から除外されました。認可に入園できていないのに待機児除外の子どもは、潜在的待機児童、いわゆる隠れ待機児童と呼ばれています。

中でも、自宅から三十分未満の認可園などに空きがあるが入所できていない児童、当区では令和二年度は四百七十四名、令和三年度は二百九十五名、そして今年度、二百四十五名もいます。保育の希望がありながら、入園できていない子どもたちが残されています。

地域、年齢構成はここにある表のとおりです。自宅から三十分未満の認可園に空きがあるが入所できていない児童の、これは令和四年度、令和三年度です。これを見ると、大きな地域偏在が見られないということが分かると思います。

そして特に一歳児が多い、これが特徴だということです。子ども・子育て会議からも、これら入園できない子どもが一定数存在していて、状況分析の必要があるということが指摘されています。

他自治体でも、保育施設の空きがある一方、隠れ待機児が減少しない問題があって、横浜市では専門チームによる分析調査を実施しました。隠れ待機児の最も多い要因として、横浜市では、きょうだいで同じ園希望がトップ。

次に、ゼロから二歳児までの小規模保育事業ではなく認可園の希望者が多い、こういったことが判明しています。結果からは、家庭事情などから、自宅近く、また、きょうだい同じ園でないと通えない切実な事情があること。そして保護者ニーズは、かつての入園できればどこでもいい、こういったことから、ゼロから五歳まで在籍できる、園庭があるなど、認可で、実績や環境がよりよい園を選択する傾向があると考えます。

当区でも同様な状況が推測されます。しかし、当区での隠れ待機児の要因分析は進んでいるんでしょうか。きめ細やかな分析、対応がないままではミスマッチは解消できず、真の待機児解消とはなりません。

区長も、令和二年当時、国基準でゼロだが、本当に困っている人、入れない人ゼロに向けて一層努力と答弁されてきました。しかし、現在、計画決定以外の区の新規園認可整備はストップしています。区長は、当区の隠れ待機児をどう認識しているのでしょうか。待機児ゼロは達成されたのでしょうか。

保育の質を守りながらの待機児解消。私は、検証の二点目として、保育の質は守られているか、これを提示したいと思います。

次のパネルですけれども、これは当区の弾力化、つまり定数以上に子どもを詰め込んでいる人数の表です。上は区立園。四十六園で、弾力化、詰め込んでいる子どもの数は二百六十八人。私立では、弾力化、詰め込んでいる子どもの数は百四十四人。こういった詰め込み保育という問題が取り残されています。

保育基準では、子ども一人当たりの面積と保育士配置基準が定められています。定数以上の詰め込みは、子どもたちが寝食を伴い、長時間過ごす保育環境の悪化ともなり、また、保育士の目が行き届かず、事故やトラブルの発生、さらに不適切保育にもつながる問題です。

この間、保育関係者の方からお話を伺いました。保育の質は保育基準にある、子どもを詰め込んだままで待機児解消と言わないでほしい。また、区立園を減らす前に詰め込み解消が先などと伺いました。

区は、この間、詰め込み、つまり弾力化解消を進めるとしていますが、いつまでに解消する計画なんでしょうか、伺います。

和田 保育部長

区では、一人当たりの面積と保育士配置基準を守った上での定員の弾力化の解消は、保育の質の向上のために重要であると認識しており、弾力化解消に向けて取り組んでいますが、一・二歳児の保育需要がまだまだ高いことや、私立保育園の弾力化解消については法人の運営にも影響することから、法人から意見を聞きながら慎重に進めているところです。

区立保育園につきましては、私立保育園に比べて一園当たりの弾力化数が多いため、弾力化解消に向けて積極的に取り組んでおり、令和四年四月時点の弾力化数二百六十八名から、令和五年四月には六十名程度の解消を行い、約二二%を削減する予定としています。

今後も、各地域地区の保育需要を見極めながら、可能な限り弾力化解消を進めるとともに、保育定員の適正化に取り組んでいきます。

江口 じゅん子

可能な限りということですが、いつまでに解消する計画はないということです。

保育の質を守りながらの待機児解消について

江口 じゅん子

では、区長に伺います。区長の掲げてきた、保育の質は譲れない、保育の質を守りながらの待機児解消を多くの保護者、区民は支持し、評価してきました。

しかし、今も隠れ待機児も詰め込み保育も解消していません。区長は、保育の質を守りながらの待機児解消はどこまで達成できたとお考えか、また、今後どうしていくのか伺います。

保坂 区長

私は、区長就任以来、待機児童解消は最優先課題として、国や都に働きかけを含めあらゆる政策に取り組み、令和二年四月に待機児解消を実現し、三年連続でこれを継続しています。

保育園の整備に当たっては、単に待機児童解消のために施設をどこでもいいからつくるということではなく、子ども第一の観点に立ち、最優先でその環境をしっかりよいものにすること、ここで限られた土地でも園庭を整備したり、保育士の配置基準を国基準以上にしっかり配置をするなど、保育の質を重視しながら、待機児童解消の量的拡大を実現したものと考えています。

委員お話しのとおり、いわゆる国計算の待機児童を解消したものの、保育園への入園を希望しながら、まだ入園できていない世帯が一定数おられます。昨今のコロナ禍では、保護者の働き方の多様化などによって、必ずしも認可保育園での長時間保育ではなく、短時間での預かりや一時預かりを希望される家庭も増えてきているという変化が見られます。

今後は、そうした多様な保育ニーズに柔軟に対応するとともに、就学前人口の動向や保育需要を丁寧に見極めて、これまで同様、保育の質をしっかり維持しながら、弾力化、いわば定員を超えて入れている部分の解消を実現していきたいと考えております。

江口 じゅん子

今のご答弁ですが、つまり国基準では待機児は解消したものの、保育園の入園を希望しながら入園できない世帯が一定数おられる、つまり待機児童はまだいるという認識で、区長、よろしいんでしょうか。

保坂 区長

国基準で待機児童を発表していますから、その国基準の待機児童はいませんが、希望されたところに行けないで、結果、保育園に行けない方で悩んでいらっしゃる方は、現にいらっしゃいます。

江口 じゅん子

現に悩んでいる子どもがまだ残されている、待機児童はまだいるというふうに、私としては区長の答弁を解釈しました。

今般示されたグランドビジョンでは、保育待機児解消の実現の一方で、就学前人口の減少などにより、既存の保育施設の欠員増が顕在化している。その対策として、区立園の定員調整や弾力化解消に取り組んできた。区立園は、就学前の子どもの育ちのセーフティーネットの役割を果たすとともに、今後、四十六園から三十九園へ計画的に再整備実施とあります。

しかし、これまでも指摘したとおり、隠れ待機児童は残されています。また、子どもたちは定数以上に詰め込まれたままです。今回の再整備で区立園の定員は三百八十六名減少するんですね。

区長、隠れ待機児童は残され、定数以上詰め込まれたままですが、なぜ区立園を減らすのでしょうか、伺います。

保坂 区長

現在の就学前人口の減少に伴って、待機児解消で拡大をしてきた私立園の定員割れや区立保育園の老朽化の課題に対応するために、区立保育園の弾力化解消に加えて、計画的な再整備の取組は必要なものと考えています。

今後も、区立保育園は、園児だけではなくて、地域地区の就学前の子ども・子育て家庭を支援していくとともに、区内保育施設の保育の質の向上を牽引していく重要な役割を担っていくことに変わりはありません。

区立保育園の再整備に伴い生み出される人員や財源は、グランドビジョンを踏まえ、区内保育施設の質を確保するための指導支援体制の強化や、世田谷版ネウボラの充実や産後ケア施設の拡大、子ども・子育て家庭への相談支援体制の強化などに当て、子ども・子育て政策全体の充実を図っていきたいと考えております。

江口 じゅん子

保育の質を守りながらの待機児解消は道半ばです。それなのに、区立園統廃合計画には納得できません。また、理由として私立園の欠員対応をおっしゃっていましたが、区立園の再整備で最も早いのは令和五年度開設の玉川拠点園。

しかし、定員は十二名のみの減少です。それ以降は七年以上先の計画なんですね。しかし、私立園は、今、欠員の対応をしてほしいのに、あと数年待ってくれというのは、方針としてはおかしいのではないか。疑問を感じます。

いずれにせよ、区立保育園や、また、区立幼稚園の統廃合というのは、区民世論も様々で、分かれるということもあり得ると思います。そのために、やはり参加と協働でしっかり議論する、グランドビジョン策定にはそれを貫くということが必要です。

区の子ども・子育て応援都市宣言は、保護者のみならず、あらゆる地域の大人が子どもたちの育ちを見守る地域社会を目指すとあります。そのバージョンアップを掲げるのがグランドビジョンです。多くの保護者、区民、保育・幼稚園など現場の先生方、関係者は知りません。

区立保育園、幼稚園の統廃合をめぐっても、先ほどから申し上げているように、区民世論は分かれます。私、この質問をするに当たって、現場の先生方何人かにお話を聞きました。

グランドビジョンを知っていますかと聞きましたけれども、当然誰も知りませんでした。ある先生からは、これから自分たちも知る機会はあるんですか、説明を聞きたいです、現場の自分たち抜きで決めないでほしいとおっしゃっていました。議会報告から約半年の決定、あまりに拙速です。策定段階からの参加と協働をどう実現するのか、区長の認識を伺います。

保坂 区長

今回のグランドビジョンなんですが、これまで施設や支援ごとに取り組んできた区立保育園の再整備や未整備地区に児童館を新たに設置する問題、また、世田谷版ネウボラの取組に横串を刺して、総合的な視点から、これからの子ども政策の将来ビジョンとしてまとめたものであります。

基本的な考え方は、子どもの人口が減る人口減少に合わせて子ども・子育て支援施策を縮小するのではなく、子ども・子育て応援都市にふさわしい、子育て施策を逆に充実させていくことにあります。

この間、コロナの影響が長引く中、子育て世帯の現状を把握する必要があり、ニーズ調査を一年前倒ししまして、一万二千世帯のうち半数を超える世帯からご回答いただき、子育て支援事業を利用する保護者へのヒアリングを行いまして、結果、妊娠や出産、子育てが配偶者やパートナーだけで行われている孤立した育児の状態が明らかになりました。

九月には、地域で子育て支援を行う区民や活動団体、子育て中の区民が参加する区民版子ども・子育て会議でグランドビジョンをテーマにワークショップ方式での意見交換を行っており、引き続き議論を重ねていきたいと思います。

今後、コロナ禍から復興の状況により方向性を見直す必要が生じた場合には、子ども計画(第三期)策定の中で改めて検討してまいります。今回のグランドビジョンなんですが、子ども関連施設の長期的な再配置に係る骨格部分をあくまで示したもので、これから区民の声や現場の声も踏まえて、区民と共有できるグランドビジョンをつくり上げていきたいと考えております。

江口 じゅん子

区民版の子ども・子育て会議で引き続き議論を重ねていくというので、大変重要な取組と思います。ただ、さらにより広く、ここに書いてある子育て支援を行う区民活動団体や子育て中の区民のみならず、広く区民の声を聞く議論をする場をつくっていただきたく、区長に伺います。

保坂 区長

先ほど最後に答弁したように、骨格部分を示しているわけですから、グランドビジョンとして、まさにしっかりと完成させていく。そのプロセスの中で、現場の声、区民の声に大いに参加をしていただき、いいものにしていきたいと思っております。

江口 じゅん子

しっかり議論をする参加と協働での場の保障、よろしくお願いします。

当面の緊急対策について

江口 じゅん子

それでは次に、区長として残す任期で何を優先し、何を実現していくのか、当面の緊急対策を伺います。

急激な物価高騰、高齢者やワーキングプアなど、低所得者の生活を直撃しています。特に高齢者は、年金削減、後期高齢者窓口負担二倍化、これも相まって、経済的困窮が、命、健康に直結する事態が生じています。

ある九十歳の方は、十月から二割負担、自分は通院が三か所だけだけれども、一回の受診の自己負担千三百円が二倍になった、年金も減り重い気持ち、配慮措置はよく分からないと伺いました。この後期高齢者の二倍化の配慮措置、分からないという声を本当に地域からよく聞きます。分かりやすい啓発をここでも求めます。

さきの一般質問でも、困窮する高齢者がエアコンを買えないなどの事情で、今夏の区内屋内熱中症死亡者数十六名、これはほぼ高齢者。うちエアコンなし、あっても未使用が十三名、深刻な状況を指摘しました。

困窮が広がる状況は、社協の特例貸付けの実績からも明らかです。緊急小口資金の特例貸付け、令和元年度は百四十件、令和二年度一万二千三百二十五件、令和三年度は四百二十二件。総合支援資金の特例貸付け、令和二年度延べ一万六千八百六十八件、令和三年度延べ一万一千二百五件。過去最高の大変な数です。

これら貸付けの返済開始は、早い方で来年一月から始まります。あるフリーランスの方のお話を伺いました。コロナ禍で仕事が激減。持続化給付金、住宅確保給付金、特例貸付けも借り、何とか生活している。貸付けの返済のめどが立たないということです。

この間、我が党は、低所得者への区独自給付金を求め続けてきました。四次補正の内示では、都補助を活用し、ひとり親など子育て世帯へ上乗せ給付と聞いており、独自施策をさらに進めていただきたい。

所得基準より少し上、子育て世帯ではないなどで従来制度の対象外の困窮層は、利用できる支援がなく、置き去りです。早急に低所得者への区独自給付金実施を求め、区長に伺います。

保坂 区長

食品や家電など幅広い製品の値上げが十月一日から大幅に広がりました。食品の値上げは六千六百品目に達し、厚労省の毎月勤労統計調査によると、七月の一人当たりの賃金は、物価の変動を考慮した実質で前年同月比で一・八%減少ということで、全区民の生活に大きな影響が及んでいると認識しています。

今後もこの新型コロナの収束がまだ見通せない中で、この物価高騰が続くことが懸念されることから、区民生活の実態や状況等を把握し、区民全体をよく見ながら、さらなる対策を考えていきたいと思います。

実施に当たり、地方創生臨時交付金の増額により追加交付が決定している八億九千万円も含めて、国や都の財源を入れながら、有効な支援につなげていきたいと考えております。

江口 じゅん子

次に、屋内熱中症死亡者十六名の事態を繰り返さないため、来年度予算でエアコン助成、夏季の電気代補助を求めます。

既にエアコン設置助成実施の先行自治体では、港区のような高齢者・低所得者対象の福祉型と、荒川区、足立区のような省エネ型エアコン購入補助の環境型があります。これらを踏まえ検討し、来年の夏に間に合うよう、ぜひ予算化していただきたく、区長に伺います。

保坂 区長

委員の御指摘のとおり、エアコンの問題について、特に熱中症死亡の方々の中でエアコンを使っていない方が非常に多かったということも含めて、深刻な状況だと考えております。

私は、特に高齢者の方が、この酷暑の中でどのような状況で生活しているのか、厳しい中でエアコンの購入ができない状況にあるのか、エアコンがあるのに使用しない理由がなぜかをきちんと把握し、併せて熱中症対策も徹底するように指示してまいります。

生活保護の仕組みの中では、エアコンを購入する費用の助成があります。また、エアコン設置に限りませんが、生活に困窮している方には、ぷらっとホーム世田谷などの相談支援があります。

エアコン設置の助成については、他自治体の取組も参考にし、今ある経済的な支援の仕組みからはどこまで届かないのか、不足するのかを検証してまいります。

このエアコンが設置してあるが使用しない高齢者の方に、命の危機であるということと、その心配事の解決ができるように、調査、そして点検、そして対策を進めてまいります。

江口 じゅん子

時期を逸することなく、早急な決断を重ねて求めます。

つながるプランに掲げる子ども・若者の学びと育ちの支援について

江口 じゅん子

それでは最後に、つながるプランに掲げる子ども・若者の学びと育ちの支援、どこまで引き上げるか、残された課題はどうするのか、その際、区政の基本である誰一人取り残さない包摂的な社会の実現を目指す立場、やはりこれの通底の必要があると考えます。

学校給食完全無償化でも、不登校で家庭で過ごす子どもや、ほっとスクール、フリースクールなどに通学する子は支援を受けられません。全体の中で取り残される子どもがあってはなりません。

区長は残す任期で、誰一人取り残さない子ども・若者の学びと育ちの支援をどこまで進めるのでしょうか。併せて、学校給食完全無償化の不登校児の子どもの支援をどうするのか伺います。

知久 教育総務部長

現在、給食費の無償化を実施した場合を想定し、関連する課題を教育委員会内で洗い出し、共有化を図っており、不登校の児童生徒への対応も含め、抽出された課題については早急に対応の方向性を整理し、必要な対策を検討することとしております。

給食の提供のないほっとスクールや不登校特例校の児童生徒につきましては、無償化により他の児童生徒との不均衡が生じることがないよう、経済的支援なども含めて、既に無償化を実施している先行自治体の取組も参考にしながら、その対応策を検討してまいります。

江口 じゅん子

子どもの最善の利益の立場で、前向きな検討を重ねてお願いし、以上で日本共産党の質疑を終わります。

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