令和2年度決算特別委員会 都市整備
2020年10月08日 江口じゅん子区議
公共交通不便地域について
江口じゅん子
まず、公共交通不便地域について、三点伺います。
一点目は、コロナ禍における対策についてです。
来年度十月の砧地域でのモデル運行に向けて、七月から運行ルート案沿道二百メートルの地域に需要予測調査アンケートが実施されました。コロナ禍ではありますが、既に新しい生活様式の下、通常の経済活動、日常生活へ移行しています。公共交通不便地域は、当区の積年の課題です。不便地域は全区の約二〇%を占め、人口換算すると十八万人以上がそこに居住しています。
誰もが必要なときに、行きたい場所へ移動できるのは当然の権利です。この間、区は、その改善のため、モデル地区の砧で四年間の検討を地域と積み重ねてきました。交通弱者と言われる特に高齢者などの地域の足の確保は、健康保持や孤独、フレイル予防などにつながり、区の高齢者施策と合致するものです。高齢者などにとって通院や買物などの外出は日常行為であるとともに、心身の健康保持に大変有益です。コロナ禍でも不便地域解消の必要性は変わりません。
また、砧の運行ルート案付近には、祖師谷みなみ商店街、成育医療研究センターや発達障害相談・療育センター「げんき」、さらに総合運動場、世田谷美術館、日本大学など、各分野の様々な資源があります。広く地域の方々や各団体と共同し、バス運行の取組を進めることは、コロナ禍で疲弊する地域経済活性化や持続可能な運行継続につながります。コロナ禍における不便地域解消の認識と、今後どう取り組んでいくのか、区の見解を伺います。
交通政策課長
平成二十八年度に調査、検討に着手した公共交通不便地域対策ですけれども、平成二十九年度に砧地区をモデル地区に選定し、平成三十年度には地元協議会を立ち上げていただくなど、この間、地域の多くの方々の御協力を得ながら調査、検討を進めてまいりました。
また、昨年度には既存公共交通による対策が困難であり、新たなコミュニティー交通により対策を検討していく優先度の高い地域として、砧モデル地区を含む十地区を重点検討地域に設定するとともに、砧モデル地区での実証運行による定時定路線型の検証等を行った上で公費負担を伴う支援を検討していく旨、区議会にも御報告させていただいたところでございます。
今年七月には、砧モデル地区における来年度の実証運行実施に向けて、コミュニティー交通に関する需要予測アンケートを行い、現在、集計結果の分析を行っております。
区といたしましては、先般、区政運営の指針として定められた世田谷区政策方針を基本とした上で、コロナ禍における感染対策の必要性や、需要見込みを踏まえた判断をする必要があるものと考えております。
委員御指摘のとおり、コロナ禍における健康不安の高まり、地域での孤立を防ぐ意味でも、高齢者をはじめ、区民の外出機会の確保は重要であると考えており、今後の取組につきまして慎重に検討してまいります。
江口じゅん子
しっかり進めていただきたいと重ねて要望します。
需要予測アンケートについて
江口じゅん子
次に、二点目として、需要予測アンケートについて伺います。
今般のアンケート結果報告は十一月ごろと聞いています。来年十月のモデル運行に向けてあと一年。しかし、地域の機運醸成と参加と協働の取組は道半ばです。この間、地域の方々からは、ワゴン車型ミニバスはどうなったの、駄目になったのなどと質問をされます。また、いまだこの取組を知らない地域の方々もいらっしゃいます。例えば、東京オリンピック開催に向けての取組も参照し、運行まであと三百六十五日などと、地域が一体となり、機運を高め、協働を進める工夫と努力が必要です。
そこで、アンケート結果報告を一つの契機と捉え、地域の広い団体も招き、多くの地域住民に参加してもらえる報告検討会を提案します。
感染拡大防止の観点からも、出張型、分散型、ズームの活用、ユーチューブ配信など、これまでにない工夫が必要です。例えば、千歳烏山駅周辺地区地区計画・地区街づくり計画素案説明会のユーチューブ閲覧数は約四百回にもなったと聞いています。広く地域に知らせ、参画を促す取組を求め、見解を伺います。
交通政策課長
新たな公共交通として継続して運行するためには、地域の機運醸成が欠かせないと認識しております。今年七月に行ったアンケート調査におきまして、前回、平成三十年の調査を上回る回答数をいただいたところであり、地域の期待を感じているところでございます。今後、より一層の機運醸成のためには、様々な周知方法により、地域の方々への情報提供は欠かすことができないというふうに考えております。
今回、コロナ禍における対応策といたしまして、分散開催やズーム活用、ユーチューブ等の御提案をいただきましたけれども、地域の方々に砧モデル地区での取組を認識していただくに当たって有効な手段だと考えております。一方、メインターゲット層が高齢者ということから、利用や参画のしやすさへの配慮をした上で、コロナ禍における情報提供を委員御指摘の対策も含め、工夫しながら取り組んでまいります。
喜多見での官民連携による新たな取り組みについて
江口じゅん子
よろしくお願いします。
この質問の最後に、喜多見での官民連携による新たな取組について伺います。
不便地域対策に、官民連携による新たな方策を一概に否定をするものではありません。一方、官民連携に関して、かねてより我が党は、区が担う役割と重要性を認識し、慎重な対応とルールづくりを求めてきました。なぜなら、民間活用にはリスクが伴うからです。具体的には、サービスの安定性、持続性、さらに、情報公開の対象にならないなど、透明性、公開性の問題などがあります。
今般の喜多見・宇奈根地域での官民連携による移動サービス導入は、二年以上にわたって広く地域住民が対象であり、さらに地元商店街やスーパーマーケット、病院などとも連携をします。これまでの区の官民連携の取組とはフェーズが異なり、まさに地域に及ぼす影響は多大と考えます。会費制で車はワゴン車タイプと想定されていますが、区民には様々な経済事情があり、登録したくてもできない方もいる、乗りたくても車椅子対応は困難ではないかと考えます。本来なら様々な事情や障害などを持つ全ての地域住民に公共交通は確保されるものです。それこそが公共交通における区の責務ではないでしょうか。事業採算が取れず撤退となったとき、地域の足はどうなっていくのか、地元経済への影響など懸念をされます。
そもそも、選定プロセスも十分に議会に報告されていません。モニタリングはどうしていくのか、年度ごとの報告はあるのか、さらに区民評価、意見反映などを検討されているのか。既に所管と官民連携課ともやり取りをしましたが、これら細目は決まっていないということです。この点、現在の官民連携指針は不十分と考えます。昨年度改定された指定管理者制度ガイドラインでは、情報公開、モニタリング、区民意見の反映、区の責務、役割などが明文化されています。企業の実証や利益追求の場とならないためにも、区の責務、役割などを明確にして、情報公開、モニタリング、また、その報告、公表、そして評価などを明らかにして対応していただきたい。見解を伺います。
交通政策課長
区は、官民連携を進めるに当たりまして、平成二十九年四月に世田谷区官民連携指針を定めております。官民連携は、単なる行政の都合や民間企業等のビジネスチャンスではなく、連携することにより区民にとってよりよい公共サービスを提供していくため、本指針により、全体的な考え方や連携までのプロセス、手法、留意事項等を整理し、区における考え方や姿勢、仕組みを庁内外に対して示し、共有することを目的としています。
今回の取組に関して、現段階での区の関わりといたしましては、事業者による地域交通トライアルの一環として提供される移動サービスが地域の移動環境の向上に寄与する可能性があることから、トライアルに必要な地域との合意形成や関係機関への各種協議などを支援しております。また、事業者による利用状況の分析、効果検証等を踏まえ、オンデマンド交通等、定時定路線型とは異なる交通手段に関して、区内の他地区への展開の可能性を確認していくこととしております。
今後、地域交通トライアルが開始されるに当たり、この取組の継続性や既存交通事業者との競合に関する課題等があると認識しており、区といたしましては、区議会はもとより、道路運送法に基づく地域公共交通会議において、適宜情報提供し、意見を伺うとともに、事業者との連携に関する対応を委員御指摘の点も含め検討してまいります。
環八千歳台交差点のバリアフリー化について
江口じゅん子
具体的にどうしていくのか、よく分からない御答弁と思いました。官民連携指針に関しましては、早急な見直しが必要です。地域への影響は多大ですし、ほかの地域展開を展望するということですから、所管として公的責任、ルールづくりなどが曖昧のまま拙速な取組とならないよう重ねて求めます。
次に、環八千歳台交差点のバリアフリー化について伺います。
環八千歳台交差点のバリアフリー化は、地元の悲願であり、この間、都議会、区議会の超党派議員がその実現を求めてきました。ここに地図のパネルがあります。いつも出しているものですけれども、黄色が環八ですね。環八を横断するにはこのL字形の歩道橋とこの五四号線を横断する、ここは五四号線を横断する横断歩道です。環八を横断するには、この老朽化した歩道橋を渡る、自転車レーンの方はここが通れますけれども、そういった状況にあります。そのために車椅子や高齢者、ベビーカーを使用する子育て層がこの歩道橋を渡ることができないので、これも去年出したパネルですけれども、このようにやむなく自転車レーンを手押し車を押して高齢者の方が横断する、また、最近もベビーカーの親子連れがこの自転車レーンを横断する、こういった状況になっています。
こういった危険な状態が長年解決されないという状況です。交通量が多く、事故も多い場所です。かねてより我が党は、安全とバリアフリー実現には歩道橋と横断歩道の併存が必要、抜本的対策としては、エレベーター設置を求めてきました。コロナ禍ですが、人命と交通安全に関わる問題であって、この改善は最重要かつ緊急の課題です。しかし、遅々として進んでおらず、区としては、都や警察任せではない主体的対応が必要と重ねて求めるものです。まず、現状を伺います。
工事第2課長
環八千歳台交差点につきましては、道路管理者である東京都におきまして、移動円滑化の基本検討を行い、警視庁と協議した結果、横断歩道の設置は通過する車両交通へ大きな影響を与えることから、昨年、横断歩道の新設は見送られました。
また、この代替案となる歩道橋へのエレベーターの併設につきましては、新たな用地の確保や維持管理費等の課題があるとのことで、具体的な検討には至っていないと聞いてございます。
本件につきましては、都区間で定期的に意見交換を行っておりますが、具体的な進捗は見られない状況でございます。
江口じゅん子
これだけ多くの超党派の会派が要望し、その背景には地元要望が根強いということがありますけれども、にもかかわらず全く動いていないということでした。現状、横断歩道設置が困難だとしたら、歩道橋にエレベーターしか選択肢はないと考えます。想定箇所と必要な面積を区はどのように考えているのか。課長は現地にも何度も行かれたと伺っていますが、実際に現地を見てどうだったのでしょうか。区としての主体的検討が必要と考えますが、見解を伺います。
工事第2課長
エレベーターの設置が考えられる場所でございますが、環状八号線や補助五四号線の歩道部が候補地として考えられます。場所によっては新たに用地取得が必要となってくると東京都からは聞いてございます。
また、一般的なエレベーターの大きさですが、移動等円滑化のために必要な道路の構造に関する基準を定める省令では、エレベーターの籠の幅は一・五メートル以上、その奥行きも一・五メートル以上とすると定められてございます。エレベーターの外寸は籠の大きさなどによって異なるため一概に申し上げることはできませんが、例えば昨年、小田急線の複々線化事業により設置された下北沢駅前のエレベーターにつきましては、面積は約十平方メートルでございます。
江口じゅん子
都や警察にエレベーター設置の本格的検討を促すためにも、地元区からの熱意が必要です。この間、区は、地元要望の早期実現に向けまして全力で取り組んでまいりますなどと御答弁され、都や警察と協議も重ね、横断歩道新設検討の際は実査にも立ち会われてきました。引き続きその主体的立場で、様々なハードルが高いのは承知ですけれども、エレベーターの設置に対しても区としての検討を求めるものです。
この間、地域の特に高齢者の方々からお話を伺ってきました。昨年春に警視庁から横断歩道設置は困難と回答が出てから何も進展がない。このまま放置されてしまうのか。また、この地域では、環八を挟んで、クリニックや芦花公園、また希望丘図書室や希望丘複合施設の集会室など、往来が日常的です。年を取って歩道橋の階段がつらくなってきた。上れなくなったら活動範囲が狭まってしまう。行きたい場所に行けなくなるのではと不安を感じるなど伺ってきました。区として、改めてこうした声の受け止めと、今後エレベーター設置をどうしていくのか伺います。
工事第2課長
当該交差点につきましては、移動の円滑化を図るべき箇所であると区も認識してございます。当横断歩道橋は都道に架かるものであり、エレベーターの設置につきましては、道路管理者である東京都が検討していくべきものでございますが、委員お話しのエレベーターの設置を含むバリアフリー対策の検討が必要と考えます。
区といたしましては、これまでも同様に地元要望や地元区としての意見を東京都に伝えるなど、機会を捉えて全力で取り組んでおり、今後も引き続き継続して対応してまいります。
江口じゅん子
全力と御答弁され、力強く思っています。ぜひその立場で具体的な進展が得られるよう、地域の方々は本当に期待し、また待ち望んでいますので、よろしくお願いいたします。
世田谷公園のミニSLについて
江口じゅん子
最後に、世田谷公園のミニSLについて伺います。
今議会で我が会派は、行政経営改革、事務事業見直しの区の基本的姿勢や視点について質疑を重ねてきました。この間、区は、政策方針に沿い、単なる事業の縮小、廃止といった予算の圧縮ではなく、施策事業の本質的見直しを進め、区民生活の安全と安心を守り抜くため、区民の生活と区内事業の活動をしっかり支えていくという基本姿勢、また、事務事業の見直しについては、全ての事業について区民に理解を得られるよう、区民、利用者の視点を中心に多角的な見直しの軸を設けるなどと御答弁されてきました。これらが各事業の見直しで貫かれることが重要です。
その一つとして、世田谷公園のミニSLについて伺います。令和元年度の事務事業評価検討の中で、ミニSL事業は当初、廃止、縮減の視点から分析、評価をされました。しかし、結果としては、民間活用に転換をされました。所管としてはどのように検討したのでしょうか。また、ミニSL事業についての区の認識を伺います。
公園緑地課長
世田谷公園のミニSLは、昭和五十七年の国際児童年及び区制五十周年事業の一環として開設され、約四十年間変わらぬSLに乗ってみたいという子どもたちの夢をかなえるとても人気の高い施設で、直近五年間の年間平均利用者数も約十四万人を超えております。
ミニSL事業につきましては、平成十五年から十六年の行財政改善推進年次計画を検討する中で、廃止を念頭に検討した時期もございましたが、区議会をはじめ、多くの区民の方からは子どもたちのために継続してほしいという声がとても強く、維持管理費用縮減に取り組むことで、現在も事業を継続しております。
今回の令和元年度事務事業評価の中で、本事業は平成三十年度に利用料を値上げしたものの、収入が低く、財源確保に課題があるため、廃止、縮減という視点で評価、分析しております。しかしながら、かつての行財政改善の時期よりも年間利用人数も平均で四万人程度増え、変わらず人気の高い状況であることから、民間活用の道を検討することといたしました。
今後につきましては、財源を確保し、より健全な運営として改善していくため、行政経営改革十の視点に基づく取組、税外収入確保策の推進の一環として、駅名等の命名権売却など、ネーミングライツ導入を検討していく考えでございます。
江口じゅん子
今御答弁で伺いましたけれども、コストだけでなく、年間十四万人も利用し、多くの区民や議会から子どもたちのために存続をの声を受け、継続、民間活用へ政策転換をした、そういうことでした。まさに新実施計画後期の行政経営改革及び今般の事務事業見直しの視点での検証の実践と考えます。現在、新年度予算策定真っ最中ですが、都市整備分野でもこのような区民目線での視点の検討を重ねて求めるものです。
また、以前私は、ミニSLについては老朽化で買替えが必要であることから、経費縮減と魅力向上の観点でクラウドファンディングを活用し、石炭で走る本物のミニSLへリニューアルして、観光資源として世田谷に家族層を呼び込む、こういった提案を行いました。維持のみならず、ミニSLの発展と区民視点での民間活用検討が必要です。税外収入確保に向けて、駅舎などのネーミングライツに取り組むとのことですが、公園を訪れる広く多様な区民目線での検討と高い公益性、何より子どもたちにとってよりよい取組の必要があると考え、区の見解を伺います。
公園緑地課長
公園では、移動販売車や常設の民間店舗の誘致などにも取り組んできておりますが、これまでの経験からも、民間事業者が公園利用者との関係を良好に保つとともに、区も連携し、公園施設の魅力向上に努めなければ継続的な官民連携につながらないと考えております。また、ただ命名権だけを売却するとなると、ただでさえ導入が難しいと言われているネーミングライツの成立は困難で、成立しても一過性のものとなる可能性も高いと考えております。
区といたしましても、民間事業者側から広く提案を受け、対話する機会を設けつつ、公募を実施していく考えでございます。一方で、公園利用者の視点も大事にし、公園との調和や子どもの健全育成に寄与するような取組も評価するなど、公募方法や評価の仕方などを工夫する必要性も感じているところでございます。現在、公募実施に向け諸条件の検討を行っているところでございますが、本日いただいた提案なども参考にしながら、よりよい事業となるよう、引き続き検討を進めてまいります。
江口じゅん子
本当に多くの子どもたち、家族連れが長年愛しているこのミニSL、事業の継続、そして発展という中で新たな手法も取り入れるということですけれども、公園利用者の視点を大事にして、公園との調和、子どもの健全育成に寄与する、こういったところにも配慮していくと御答弁されました。ぜひその方向でお願いしたいと重ねて申し上げまして、以上で日本共産党の質疑を終わります。
