令和元年度(2019年度)第2回定例会 一般質問
2019年06月13日 江口じゅん子区議
区長の今期の政治姿勢について
江口じゅん子
質問通告に従い質問します。
まず、区長の今期の政治姿勢について伺います。
さきの区長選挙で問われたのは、保坂区政の二期八年間であり、結果、区民は自民党区政への後戻りではなく、保坂区政の継続を選択しました。区民はなぜこの選択をしたのか。
まず、区政が区民の切実な要求にしっかりと応えてきたことです。保育では、国の規制緩和の圧力に対峙し、質を守る立場を鮮明にした待機児解消に向けた努力が、子育て世代の大きな支持を得ました。さらに、多様性の尊重や社会的包摂の立場で、同性パートナーシップ宣誓や条例制定、また若者のひきこもり支援などに踏み出しました。当事者、家族の力となるだけでなく、社会的影響ももたらしました。
二点目は、安倍自公政権の社会保障の後退から区民生活を守る取り組みを進めてきたことです。相次ぐ国の生活保護基準引き下げに対し、就学援助など低所得者支援に影響が出ないよう率先して対応、これが全国の自治体に波及しました。さらに、区は今年度から学校給食の一部無償化を含む就学援助の拡大に踏み出します。
三点目は、行政経営改革の手法を転換し、財源は安易な区民負担増ではなく、事業の効率化や、保育関連経費のように国から財源を引き出し確保してきました。
これに対し自民党は、就学援助の、学校給食費に関する費目の基準引き上げを強行実施などを理由に本年度予算に反対し、道路整備を抜本的に加速、現区政ではできない行政改革を断行を掲げ、区長選で対立候補を擁立しました。しかし、区民は保坂区政の継続を選択しました。区長として、今期、区民の信託にしっかり応え、区政のさらなる発展を期待します。
我が党としては、区長とともに、この区政前進のため議論、提案も重ね、力を尽くしてまいります。
区政には課題が山積しています。区長は選挙政策集で、国の社会保障政策が後退するとき、区民生活を支えるのも自治体の役割と述べられました。その立場で、国保や介護保険など、さらなる積極的対応を期待します。国が推進する民営化、民間活用に関しては、自治体の公的役割を曖昧にし、住民サービス後退をもたらすものであり、区の毅然とした対応を求めます。図書館、児童館の民営化は進めるべきではありません。
財政運営に関しては、新実施計画(後期)で示した行革計画での独自努力と、国に対してはふるさと納税など税源収奪への改善と、財源確保の一層の取り組みが必要です。今年度の依命通達にも、この方向性の反映を求めます。
区長の今期の区政における基本的姿勢を伺います。
保坂 区長
江口議員にお答えをいたします。
まずは、区政運営の基本姿勢ということでございます。
私は、この四年間の区政運営方針として、世田谷改革バージョンアップの実現に向け、改革を牽引する三つの取り組みとして、地域行政の検証と改革、区立児童相談所の開設に向けた改革、東京二〇二〇オリンピック・パラリンピック競技大会を契機とした共生社会のための改革について述べさせていただいたところであります。
とりわけ、地域行政制度の検証につきましては、行政組織のあり方への再検証のみならず、百万都市にやがてなろうとしている世田谷区が、特別区の枠にとどまらない自治権拡充の道を開き、議会や区民の幅広い御意見をいただきながら、自立した自治体の形を提示をしていきたいと考えています。
また、ダイバーシティーを貫く多様性と社会的包摂を進め、東京二〇二〇大会のレガシーである共生のまち世田谷の実現を目指していきます。
これからの四年間は、世田谷区基本計画の仕上げに向けた極めて重要な期間であります。
計画に掲げる重点政策や分野別政策を確実に実現するとともに、例えば、多額の経費を必要といたします学校改築に当たり、棟別の改築を丁寧に組み込んだり、仮設校舎を極力抑制するなどの工夫により、財源創出と同様の効果を生み出すなど、一層の行政手法の改革を進め、財政の健全性も維持してまいります。
憲法で保障されております基本的人権と平和を守る役割は、区民の生活に責任を持つ自治体の責務と考えています。今後も、区民や区議会の皆様の意見を伺いながら、百万都市のかじ取りを信託された区長として、重責を果たしてまいります。
今期の区政運営について
江口じゅん子
次に、今期の区政運営について、大きく三点伺います。
一点目は、行政経営改革です。
新実施計画(後期)の行政経営改革では、従来の考えが転換され、重要な目的、視点が明記されました。行革の目的を自治の推進と独自性のある自治体経営の確立に向けと明記した意図を伺います。
また、民営化、民間活力については、行政の責任を明確にし、質の確保に十分留意しながら積極的に進めるとありますが、行政の責任と役割及び基本的姿勢について伺います。
次に、指定管理者制度運用のガイドライン制定です。
指定管理者制度は、区民の共有財産である公共施設の管理運営を民間に委ねるものです。
我が党は、区民サービス向上、コスト縮減、質の確保を、行政の責任を明確にしながら進めるルールと具体化を求めてきました。ガイドライン策定における基本的姿勢と進捗状況、また質の確保、行政の責任の明確化、公平性、透明性確保について見解を伺います。
行革の最後に、適正な利用者負担の導入指針の見直しです。
新実施計画(後期)では、区民負担に関しては施策事業の継続性と政策目的を踏まえ、経費抑制策や業務改善などに取り組むと明記をしました。この視点に立った指針の見直しを求め、区の基本的姿勢及び進捗状況、今後のスケジュールを伺います。
また、施設に係る経費には、管理運営経費と減価償却費を含む建設・賃借料があります。現在は施設の管理運営経費を利用者負担として、使用料と税金で賄っています。
しかし、この間、区は使用料算定の対象経費に減価償却費を含むフルコストを含め試算することが望ましいとしています。施設運営コストの総体把握に反対はしません。しかし、公共施設はそもそも区民の税負担でつくられています。施設の利用者に再度減価償却費、つまり施設建設費を求めることは二重負担となり、区民理解は得られません。
新たな指針でも、区民負担の考え方は、現行の管理運営経費を利用者負担の対象とすることを求め、見解を伺います。
中村 政策経営部長
私からは、行政経営改革について六点、順次お答えいたします。
まず、新実施計画(後期)の行政経営改革の目的に、自治の推進と独自性のある自治体経営の確立に向けと明記した意図についてです。
新実施計画(後期)の行政経営改革では、三つの方針を掲げております。方針の一つとして、区民に信頼される行政経営改革の推進を掲げ、都区制度改革や地域行政の推進、また参加と協働を基軸にした区民参加の推進など、新たな行政のあり方を目指す取り組みを位置づけております。
また、安定した財政運営を可能にするために、方針の二として持続可能で強固な財政基盤の確立を、方針の三として資産などの有効活用による経営改善の取り組みを掲げています。
これらをともに進めることにより、自治の推進と独自性のある自治体経営の確立を実現することができると考えていることから、行政経営改革の取り組みの冒頭に、目指すべき目的として明記したものでございます。
次に、民間活用を考える際の基本的姿勢についてです。
民間活用に当たっては、区が直接行うべき役割はしっかりと担いながら、民間事業者の専門性や資源の活用により、サービスの向上と創意工夫によるコスト縮減を目指すとともに、導入に当たっては、サービス基準の提示や運営状況の検査、監督等により、事業者によるサービスの質を確保することが重要だと考えております。
これまでも、例えば保育事業における民間企業参入に際して、保育の質のガイドラインを作成し、行政や事業者の果たすべき役割と責任を定めるとともに、保育所への定期的な巡回指導を行うなど、事業の質を確保する取り組みを進めてまいりました。新実施計画(後期)の行政経営改革の取り組みでは、民間活用に当たっては、行政の責任を明確にし、その責任のもと、事業の質の確保を図ることが重要であると認識し、考え方を明記しております。
指定管理者制度の導入など民間事業者に委託する場合における事業の質の確保について、適切な指針等を定め、また適正な指導、調整を行うことで責任を果たしてまいります。
次に、指定管理者制度運用のガイドライン制定について、基本的姿勢と進捗状況、それと質の確保、行政の責任の明確化、公平性、透明性、これら二点にお答えをいたします。
区は、これまで指定管理者制度運用指針を策定し、随時改善を図りながら指定管理者制度の運営を行ってまいりました。この間、区議会の御意見も踏まえ、指定管理者制度の運用の考え方を、庁内のみならず民間事業者や区民にわかりやすく発信し共有することを目的に、指針等を再編したガイドラインの策定作業を進めております。
基本的な考え方としては、制度導入に当たっては、区民の平等で公平な施設利用の確保のもと、行政が直営で提供する以上のサービスの充実を図ることを基本として、総合的に検討、判断すること、制度導入後においても、行政の責任として日常のモニタリングを通じた指定管理者との対話や年度評価を行うとともに、外部委員を含めた選定委員会による評価を行うことで、施設運営の質を確保することを明文化してまいります。
さらに、選定委員会の議事要旨や指定管理者候補者の提案書の公表など、情報の公開に関する考え方を整理し、区民への透明性を充実させることをガイドラインに明記いたします。
今後、庁内での議論を深め、区議会の御意見を踏まえながら、今年度中にガイドラインを策定し、区ホームページを初め、広く区民に公表、共有をいたします。その後も引き続き施設利用者である区民、指定管理者、区議会等の御意見を伺い、ガイドラインを随時更新し、改善をしてまいります。
次に、適正な利用者負担の導入指針の見直しに当たって、基本的姿勢、進捗状況、今後のスケジュールについてお答えいたします。
区民利用施設の使用料、利用料の見直しにつきましては、新実施計画(後期)において、施設の管理運営費の把握や利用状況分析に加え、区民生活を取り巻く社会状況の変化も幅広く捉えた検証を行い、見直しの要否を総合的に判断するとしております。現在、施設使用料見直しに関する指針の策定に向け、利用者の負担割合だけでなく、社会状況の変化に対応した検証、施設に関する全てのコストの見える化と算定方法の明確化などを基本的な考え方として検討を行っております。
今後、平成三十年十月から見直しした使用料の影響を踏まえ、令和元年度の新公会計制度に基づく施設別行政コスト計算を活用した検証を行い、令和二年度中にまとめてまいります。本指針策定に当たりましては、他自治体の状況も十分調査し、議会での御議論をいただきながらしっかりと検証し、区民の理解が得られる指針となるよう努めてまいります。
最後に、適正な利用者負担の導入指針の見直しに当たって、使用料を算定する際の対象経費の考え方についてです。
現在検討を進めています施設使用料見直しに関する指針につきましては、減価償却費について、使用料算定の対象経費として取り扱うことを検討項目の一つとして取り入れさせていただいているところです。
この点につきましては、計画的な財政運営を図る必要があること、また、新公会計制度の導入により、区民の皆様に減価償却を含め、かかる経費の全体像をお示しすることが先決だろうと考えております。しかし、減価償却費の取り扱いにつきましては、これまでの建物などの初期投資を対象としない扱いを変更することになり、その考え方や利用者負担割合等への影響につきましては、区民への過度な負担とならないようにしっかりと検証する必要があると認識しております。
利用者に負担いただく使用料の算定に当たりましては、施設の設置目的や区政課題に対応した政策的な調整などを考慮し、数値的な検証もしっかり行った上で、区民から理解を得られ、透明性のある使用料算定を目指し努力してまいります。
以上です。
子どもの多い世帯の減免について
江口じゅん子
課題の二点目は、国民健康保険の多子世帯、つまり子どもの多い世帯の減免についてです。
この間、全国知事会などは、国の責任において国保の構造的な問題を抜本的に解決し、将来にわたり持続可能な制度を構築することを決議し、高過ぎる国保料を協会けんぽ並みに引き下げるため、一兆円の公費投入を求めています。我が党も、この全面的実現を求めるものです。
しかし、国は構造的問題はそのままに、高過ぎる保険料を抑えるため多くの自治体が行っている一般会計からの補填解消を目的に広域化を実施。さらに、さきの国の経済財政諮問会議では、この方針を国政選挙後の骨太の方針に盛り込むと報道されています。
これは、自治体独自繰り入れの早期解消を促進し、国保料の大幅値上げにつながる動きです。区長は、この後退から区民生活をどう守るのか、認識を伺います。
特に、子育て支援に逆行する多子世帯の均等割減免は喫緊の課題です。均等割は、収入のない赤ちゃんであっても加入者一人当たりにかかる負担であり、今年度は年間五万二千二百円です。
子ども二人で年間十万四千四百円、三人では年間十五万六千六百円と、子どもがふえるほど保険料が上がります。均等割もこの間毎年値上がり、この五年間で七千五百円も上がりました。
さらに、広域化に伴う今後の五年間で保険料を抑えるための法定外繰入金がなくなれば、区の直近の試算では、一人当たり年間保険料は八千四百六十九円上がります。
区内で食品製造業を営む、三人のお子さんを持つ方からお話を伺いました。売り上げは減る一方で、国保料の均等割は低所得者対策として二割減免されている。子どもは私立大学生、高三、中三。
大学生の学費捻出のため、貯金を取り崩した。受験が重なるので、志望校は絞って受験をするよう言っている。減免があっても五人家族の国保料は重く、何とかならないかとの切実な声でした。
区長会では、二十三区統一での多子世帯減免の協議が行われていますが、その間も保険料は毎年上昇し、子育て世帯の生活を圧迫します。区長は、均等割が少子化対策や子育て支援の考え方と真逆であると繰り返し発言をしています。保坂区政での積極的対応を区民は大いに期待をしております。
国保の多子世帯の均等割減免についても、子育て支援対策の一つと捉え、その負担軽減に踏み出すときです。二十三区統一での多子世帯減免策の実施まで、国保会計を超えた子育て支援としての区独自の時限的対応を求め、区長の決断を求めるものです。
保坂 区長
次に、国民健康保険、多子世帯問題についてであります。
報道によると、政府は国民健康保険料の都道府県内統一に向け検討を本格化すると伝えられています。
これが東京の区部の保険料へのさらなる上昇圧力となり、区民の暮らしに直接かかわってくるものであれば、影響をしっかり見定めていかなければならないと考えています。
この間、私は国民健康保険の均等割が多子世帯ほど保険料が上がることから、国の少子化対策や子育て支援の考え方とは真逆の制度であり、特別区長会で直ちに制度改善すべきと問題提起し、区長会として国や都に既に要望を上げるなど積極的に取り組んでまいりました。
現在の制度が、人口減の原因となっている少子化対策と正反対で矛盾していることは明白であり、国に対する特別区長会あるいは全国市長会としての要望をさらに強く働きかけ、早期の改善、改革につなげていきたいと考えています。
御指摘の国保における多子世帯軽減に関しましては、課題として強く認識しているところですが、総合的な子育て支援策の観点から取り組んでまいります。
都市計画道路について
江口じゅん子
最後に、都市計画道路についてです。
都道五二号線に対し、この間区が事業中区間、優先整備路線区間に加え、環状八号線以西につきましても、事業反対の声が区にも要望書として寄せられていると答弁をされたとおり、沿線の反対世論は広がっています。
さらに区は、反対の声が生まれる背景として、地域に根差した生活やコミュニティー、地域の歴史などが失われたり、町の環境が悪化するなどの不安があり、事業の必要性に対する疑問にもつながっていると区の認識を示しています。そのとおり、この計画に住民合意と理解は得られていません。
この地元区としての課題認識に区としてどのように対応していくのか。区長の標榜する参加と協働を都市計画道路においても貫いていただきたい。区長の今期の都市計画道路への対応を伺います。
以上で壇上からの質問を終わります。
岡田 副区長
私からは、都市計画道路について御答弁申し上げます。
道路は、安全で災害に強い町を実現するために大切な都市基盤の一つであります。しかしながら、道路整備には賛否両論の意見が存在し、反対の声が生まれる背景には、地域環境、区民生活への影響、それらに対する不安等があると認識しております。
区では、これまでも区に寄せられる地域の皆様のさまざまな声を受けとめ、施行者として、また都が施行者であるときは都に伝え、共有し、道路整備に地域の皆様の理解を得られるよう、丁寧な説明と必要な対応をしてまいりました。
道路整備に限らず、公共施設整備には地域の皆様の理解が必要不可欠であり、例えば、小田急線上部利用計画においては、北沢PR戦略会議、北沢デザイン会議などの取り組みから、住民、行政、企業の協働による成果も目に見えてきております。
都市計画道路につきましても、住民合意、理解、協働を軸に、まちづくりなど区の役割を果たす中で、区としてさらに何ができるのか、住民の方々の声を伺う機会を大切にし、区民と議会への丁寧な説明に努め、対応してまいります。
以上です。
江口じゅん子
都市計画道路について、今期の区政の方向性を確認させていただきました。住民合意、理解、協力を軸に対応していくと、大切な方向性と思っております。
一点、区長に要望します。区長みずから住民の声に耳を傾ける機会、大変住民の方は期待をされています。ぜひ具現化を要望し、終わります。
