平成30年決算特別委員会 福祉保健委員会所管質疑

2018年10月09日 江口じゅん子区議

子ども施策について

江口じゅん子

おはようございます。日本共産党の福祉保健領域の質問を始めます。
まず、子ども施策について、大きく二点伺います。

一点目は、夜間保育についてです。
議会ではこの間、夜間・休日保育のさらなる拡充を求める声があり、区も積極的な対応を検討しています。
多様化する親の働き方、子育てニーズに対して、区として保育施策の基本に何を据えるのか、その上で、これまでの検証、実績、経費、効果などを踏まえての対応が必要と考えます。

区の保育施策の基本の一つは、平成二十七年策定の区の保育の質ガイドラインです。ガイドラインでは、保育事業や実施主体が多様化する中、子どもを中心とした保育の実践、さらに世田谷区では保育の質の向上に取り組む上で、子どもの権利を守ることを一番大切にし、保育内容全てに関連することと考えていますと、ガイドラインではこのように明記をされています。
親にとっては、多様な働き方に即した保育ニーズがあり、子どもはそれに合わさざるを得ません。
子どもの命と権利が十分に保障されている保育であっても、子どもが長時間、中には朝まで保育園で生活をすることは大きな負担です。子どもの育ちと権利の保障の視点に立った検討は不可欠です。

これまで区は、区立園民営化において、民営化を受託した五つの施設で二十二時十五分までの四時間延長保育と日、祝日の休日保育、さらに一施設で二十四時間対応型延長保育と、いち早く多様な保育ニーズに積極的に応えてきました。
私はこの間、四時間延長保育をしている複数の園と二十四時間対応型延長保育を行っている成育しせい保育園を視察しました。四時間延長をしているある園長先生は、保育園の後、ベビーシッターに預けるなど二重保育の実態もあり、四時間延長保育の必要性はあると思った。

しかし、実践し、ゼロ、一歳の子どもも含め二十二時まで保育園にいるのは、子どもの育ちからどうなんだろうと思った。うちの園では、保護者の勤務先に子どものために長時間残業について考慮をしてほしい、早く帰してほしいなどの内容で手紙を出しているとのことでした。
また、視察したどの園も、この間の国の働き方改革などの影響もあり、三時間を超える延長保育の実績はほとんどないとのことでした。

成育しせい保育園では、四時間延長保育と二十四時間対応型延長保育を行っています。二十四時間の対象は区内認可園に通っている一歳以上の全ての子どもが使えます。
園長先生は、子どもは日中の保育園とは違うところで夕食、入浴、お泊りをする。畳の部屋がある二LDKの家庭的環境で専任の夜間保育士を置くなど十分配慮している。親にはさまざまな事情があるが、しかし、子どもの育ちを考えると、安易にお泊りを行うのはどうか。
利用している親は時差のある国際関係の仕事をしていたり、ひとり親の医療職の方などが多い。新宿などとは違い、夜間対応のサービス業種の方はいない。実績もほとんどなく、これ以上区内に二十四時間対応型保育をふやす必要があるのかとのことでした。

ここで、各園の延長保育の実績について伺います。

後藤 保育課長

保護者の夜間勤務により、従前の日中の預かりでは対応できない子どものための夜間の保育について、区内には夜間保育所と定義される午前十一時ごろから午後十時ごろまでのおおむね十一時間開所をしている認可の保育所はございませんけれども、成育しせい保育園におきまして、十三時間の延長保育を実施しており、二十四時間保育に対応しております。
また、区内五カ所の私立認可保育園におきまして四時間の延長保育を実施しており、二十二時十五分までの預かりを行っておりますが、利用対象は在園児のみとなってございます。

成育しせい保育園での延長保育の利用実績につきましては、月に一人が一回程度の利用となってございます。保育園へのお問い合わせはございますが、保護者の方も家族に頼むなど、なるべく預けない方法を模索してございまして、結果的に利用に至らないことが多いとのことです。

また、私立認可保育園五園で実施してございます四時間延長保育のうち、午後九時十五分から十時十五分までの利用時間帯につきましては、利用のない園がある。また、あったとしても一名程度の利用にとどまってございます。

その他、区内には病院が独自に設置している院内保育所など二十四時間、あるいは夜間の保育に対応している認可外の保育施設が複数ございます。

江口じゅん子

利用実績がほとんどないということで、今現在四時間保育を行っている六園のうち、五園と成育しせい保育園の実績をこのように表にまとめました。二十九年度の実績ですが、三時間以上の利用者は、ゼロ、経堂保育園ゼロ、松原が〇・三、等々力が一・七、砧が〇・一、烏山が〇・九となっています。そして成育しせいの十三時間、朝までの延長保育は、二十九年度実績では一人と、本当に実績が少ない、乏しいということがわかります。

四時間延長保育、十三時間延長保育、二十四時間についての実績を伺いました。私は、視察の際、各園のここ数年の実績も聞きましたが、ほぼ同様で、ほとんどないという状況でした。

区は、平成二十三年二月に区立保育園民営化検証結果報告書を報告しています。長時間延長保育について、三時間以上の利用は多くないが、しばらく実施状況を見守る必要がある。
区が民営化園に午後十時までの保育の実施を義務づけた背景には、交代勤務や夜間勤務につく保護者への支援があったと考えられるが、通常勤務者が残業のために利用するケースが大部分を占めている。子どもの視点から見た場合、長時間の利用者がふえることを単純に評価してよいとは思えない。
制度があることが保護者の就労時間を長くする側面もあり、今後の展開は利用状況を見た上で判断すべきであると、平成二十三年二月の時点で、区立保育園民営化検証結果報告書でこのように検証結果が述べられています。区としては、この検証結果を踏まえた検討が必要です。

既に区内六カ所に四時間の延長保育と区内の認可園に通う子どもを受け入れる二十四時間対応型延長保育が整備をされ、実績は乏しく、これ以上の拡充の必要があるのか疑問を感じます。実績はなくても、事業者はいつ来るかわからない利用のため、貴重な保育人材を確保しています。
また、そのために区から補助金も出されています。なぜ夜間保育の拡充に踏み出すのでしょうか。二十三年の検証結果報告書を区としてはどう踏まえたのでしょうか。実績が乏しい事業に区民理解が得られるのか疑問を持ちますが、区の見解を伺います。

後藤 保育課長

夜間の保育の拡充に当たっては、子どもの育ち、それから保育の質、保護者の求める保育の提供等、これらを全て満たす必要とされる効果的な保育施策として展開することが大前提であると考えております。
このため、まずは利用が見込まれる方の就業状況、園の立地、時間帯など、世田谷区に適した夜間の保育がどのようなものかを把握するために、年末に集約する次期子ども計画策定での無作為抽出によるニーズ調査結果に加えまして、夜間の保育が必要と思われる方々を対象とした独自の実態調査を行いまして、お話しの民営化の検証結果ですとか、実績等も踏まえた上で、三十一年度に方向性をお示ししてまいります。

また、十月一日以降の保育所の整備運営事業者の募集に際しまして、休日、夜間の延長保育の実施に向けた積極的な提案を事業者より受けることとしましたが、事業者の審査に当たりましてもこの点に着目いたしまして、安心して事業展開できる事業者選定、こちらを行いまして、次年度以降の実施園の拡大を図ってまいります。

事業の拡充に当たりましては、いまだ保育士不足の状況下にあることから、保育士の業務軽減にも目を向けた必要な支援策も含め、検討してまいります。

江口じゅん子

実態調査を行うということで必要な段階だと思います。

私も夜勤のある病院で看護師を十二年間務めてきましたけれども、看護師と看護師同士の夫婦ですとか、看護師とタクシー運転手、それから看護師と塾講師など、交代制勤務の夫婦が大変多く就労していました。
子どもを育てながら夜間勤務を、独身や子どもがいない人と同様に勤務をしていましたけれども、やはり子どもを夜間保育に預けているという話や実態は聞いたことがなくて、先ほどの課長もおっしゃっていたとおり、やはり子どもの育ちに大きな影響があるということで、それぞれの親側の努力、工夫をしていると思います。ぜひ実態を踏まえてしっかり検討していただきたいと要望します。

それでは次に、二点目は、今後の児童館のあり方について伺います。

区では、世田谷区立児童館のあり方検討委員会において今後の児童館についての検討を行っています。区は、児相移管や地域包括ケアシステムの構築などに当たり、相談支援など児童館機能の拡充、また再整備の必要があり、民間の力の導入などを含め検討していると認識をしております。

福祉保健常任委員会では、今後のスケジュールがこのように示されました。大変大きくしましたけれども、七月から十一月までの四回でこの検討委員会が行われるということです。
内容も、例えば第三回では児童館における子ども・子育て家庭への支援、ソーシャルワーク機能、民間の力の導入について検討予定など、児童館の今後のあり方が大きく変容するだろう重要な議題の検討が行われます。
それがこの七月から十一月までの四回で終えられ、十二月の第四回定例会後に区としての方向性や方針を示すと伺っていますが、大変拙速な議論だと思います。常任委員会でも同様の意見が示されました。そういった拙速な議論に対して、非常に疑問を持っております。

児童館は、乳幼児から中高生までの子どもの健全育成の場所です。その変容の影響は何より子どもたちが受けます。子どもたちや保護者、地域、そして議会への十分な議論の保障と意見の反映は不可欠です。
また、再整備においては多額の経費が伴います。場所の確保も必要です。これまでの質は担保されるのか、職員確保はできるかなど不安を持っております。
これらの観点に立ち、今後、児童館のあり方について疑問点などを伺ってまいります。
まず、再整備についてです。

現在の児童館の整備状況と未整備地区は幾つで、どこになるのか伺います。

相蘇 児童課長

児童館については、区内に現在二十五館ございます。まちづくりセンターの管轄地区別の配置状況を見ますと、未整備の地区が、今度新しくできます二子玉川地区を含め八地区あります。具体的には、太子堂、上馬、代沢、北沢、松原、奥沢、九品仏、二子玉川でございます。

また、一つの地区の中に二カ所あって、重複しているという地区が五地区あります。こちらについては、上町、用賀、深沢、喜多見、上祖師谷でございます。

江口じゅん子

改めて具体的な場所を聞きました。未整備地区は八地区あるということで、再整備の課題の大きさを感じています。
さきの総括で他会派の方から奥沢には児童館がない、目黒区に行っていたというお話もありました。二子玉川も再開発による子育て世代の大きな増加があるにもかかわらず、図書館カウンターはあるが、図書館はない、また児童館はない、集会所は不足と子どもたちを安心して遊ばせる公共スペースが不足をしています。

一方、例えば未整備の地区で今名前が挙がった松原地区は、隣の下高井戸の駅近くに松沢児童館があり、自転車などで十分利用可能です。
さらに、世田谷・北沢地域に未整備地区が多く出ましたけれども、土地、場所の確保が困難な地域であり、例えば保育所もこの地域の整備は十分ではありません。

二十七のまちづくりセンターの各地区に子どもや子育ての身近な拠点があることは重要です。整備が求められる地区もあります。しかし、地区によっては移動可能な場所に既設の児童館があり、さらに場所確保、経費などの大きな課題があります。

ここで、各地区整備の必要性と未整備地区では、現状どのような対応をしているか伺います。

相蘇 児童課長

区における子育ての支援や相談については、子ども家庭支援センターを初め、地域子育て支援コーディネーターなどさまざまな機関が連携することによって対応するとともに、妊産婦や乳幼児親子から小学生、中高生世代まで幅広い年齢層を対象とした児童の健全育成を児童館、子育てひろば、新BOPなどにより行っておりますが、児童館のない地区では、児童館になじみがなく、利用されていないというお子さんもいる状況であると認識をしております。

今後は身近な児童館の特性を生かした相談や気づき、見守りや支援の拠点となっていくとともに、地域の方や団体などと連携した場をつくっていくなど、まちづくりセンター、あんしんすこやかセンター、社会福祉協議会の地区の三者とも連携していくことが重要になると考えております。
このようなことから、児童館がより身近にある子どもを軸とした地区のネットワークの中心として機能するために、地区ごとに児童館の機能が必要であると考え、現在検討を進めているところでございます。

民間の力の導入について

江口じゅん子

次に、民間の力の導入について伺います。

検討委員会で――先ほどパネルを示しました――民間活用についてもさまざまな議論が行われていると聞いております。委員からは、地域偏在解消となると、公設公営で幾つも建てるのは難しい、数をふやすなら民営もあり得る、また、ソーシャルワーク機能強化となると区の職員への信頼感は大きい、遊びは民間、相談は区と業務を切り分けてはどうかなどなど、議事録の要旨なども確認しましたけれども、そういった意見があったということを確認しております。

相談機能拡充が必要、また全地区に児童館整備という前提に立てば、実現のための方策として、民間活用、そのための業務の切り出し、また個人情報保護などの懸念の議論は当然出てくるものと考えます。

我が党は、この間、民間活用導入については、新実施計画後期の行政経営改革の視点に立った取り組みが必要と求めてきました。ここにありますけれども、ここの一三ページです。
持続可能で強固な財政基盤の確立の視点六、民間活用や官民連携によるサービスの向上とコスト縮減のところでは、サービスの向上やコスト縮減が図れる場合には、行政の責任を明確にし、質の確保に十分留意をしながら、民間活用を積極的に進めますと、このように書いてあります。

仮に児童館を民営化した際、サービスの向上とコスト縮減が図れるか疑問を持っております。また、民間の力の導入を考える際にも、区として児童館行政の公的責任について、これまでの児童館の役割や実績を踏まえた質をどう確保していくのか明確にする必要があります。

ここで伺いますが、児童館における区の責任と質の確保について見解を伺います。

相蘇 児童課長

児童館は十八歳未満の全ての子どもを対象とし、地域における遊び及び生活の援助、子育て支援を行い、子どもの心身を育成し、情操を豊かにすることを目的とした施設でございます。

現在、児童館では、子ども一人一人の権利や人格を尊重するとともに、地域社会の中で子どもたちが健やかに成長し、発達及び自立が図られるよう努めることが行政の責任であると考えております。

これまで児童館は、地域の方々や活動団体の方などと子どもや地域の状況を共有し、信頼関係を築きながら、地域の子どもたちを乳幼児期から中高生まで継続して見守り、育成に取り組んできていただいております。

今後は、子どもの声をより反映させ、地域の方々と協働した取り組みを充実、継続的な支援や見守り、信頼関係に基づく敷居の低い子どもや地域の方からの相談の拠点となるよう進めるとともに、子ども家庭支援センターとの連携を強化し、研修等により職員のソーシャルワーク機能の向上を図り、その質の確保にも取り組んでまいります。

江口じゅん子

員今、児童館がこれまで地域の子どもたちを継続して見守って育成に取り組んできたと、地域の方々と関係をつくってきたと、そういった御答弁がありました。これは世田谷区の児童館ならではの本当にすばらしいところだと思います。
こうした世田谷区の児童館のよいところが、再整備、機能拡充、民間の力の導入によって弱体化するのではないか、そういった不安を持っております。

これまで児童館は地域に根差した二十五の区立の小型館として運営をしてきました。
地域の児童館でお話を伺いました。児童館は、職員が地域に根を張ってさまざまな行事、事業を通じて子ども、地域との信頼関係やネットワークを築いてきた。

例えばある児童館の子ども食堂は、地域の方の心配な子がいるよねのつぶやきから始まった。地域の大人やJAの協力で地場野菜の提供、御飯づくりを担ってもらい、そして御飯ができるまで子どもと大人が遊び、みんなで食べてみんなで片づける。遊びや行事を通して地域コミュニティーをつくってきた。
さらに、職員の子どもとのかかわりも受付で一人一人の子どもたちへ声をかけることから始まる。子どもや保護者と関係をつくって子どもとの変化をキャッチし、継続した見守りや必要な機関につないできた。

こうして一連のかかわりを切り出せないし、切り離せばこれまでの児童館のよさが失われてしまう。公務員である職員が長年地域とともに培ってきた実績、経験の蓄積と質の高いかかわりがある。こういったお話を伺いました。こうした児童館の役割が空白地区の新設児童館においても保障されなければならないし、またそのことによって既設児童館の弱体化となってはいけません。

さきの一般質問でも、他会派から遊びと相談機能を分化できるのかなど指摘がありました。これに賛同するものです。仮に児童館の遊びは民間、相談機能は公が担うとなったとき、果たして子どもは家庭や学校の悩みをあえてそういったところに相談に行くのでしょうか。職員はこれまでのように異変に気づけるのでしょうか。

区は、その際の他会派の答弁で、児童健全育成と相談見守りなど、機能を両輪としてともに充実させるのが重要と考えを示しておりますけれども、具体的にどう実現をしていくのでしょうか。区の見解を伺います。

相蘇児 童課長

児童館は、児童に健全な遊びを通してその健康を増進し、または情操を豊かにすることを目的とする施設であり、遊び自体が重要な要素であると考えております。

世田谷区立児童館のあり方検討委員会においても、身近な地区にある児童館の特性を生かした相談や気づき、見守りや支援、地域の方や団体等と連携した場づくりなどの役割が今まで以上に求められますが、それは児童健全育成事業を基盤としているからこそ意味がある。また、個人情報を扱う相談を行えるのは区の職員に対する信頼感や安心感が基礎にあるからというふうな御意見をいただいております。

区といたしましても、子どもたちが主体的に取り組む児童健全育成と相談や見守りなどのソーシャルワーク機能を両輪として、ともに充実させていくことが重要であると考えており、御指摘の趣旨も踏まえ、児童館の機能を高めるための効果的な運営手法について検討してまいります。

具体的には、十一月に予定しておりますあり方検討委員会のまとめなどを受け、十二月を目途に児童館の今後の方向性、方針等をお示しし、人材育成、各機関の連携ルールづくりなど、運営事業の見直しなどを行ってまいりますが、その後も可能な限り情報提供を行い、区民や議会などの御意見を伺うとともに、次期子ども計画の検討の中でもさらに議論を深めて進めてまいります。

江口じゅん子

ぜひ丁寧に進めていただきたいと思います。

この検討委員会に当たっては、現職の児童館の職員ですとか、それから、使う子どものニーズとか意向の調査、親の調査、こういったことはない段階で、今七月から十一月まで検討委員会を四回やるというふうに認識をしています。
区民や議会などの御意見を伺うとありましたけれども、ぜひ肝心の子どもたちの意見もきちんと聞いていただいて、丁寧に進めていただきたい、拙速に進めることに対しては十分気をつけていただきたいと重ねて要望いたします。

今般区より示された精神障害者施策の充実について

江口じゅん子

次に、今般区より示された精神障害者施策の充実について伺います。

国では、精神障害者が地域の一員として安心して自分らしい生活ができるよう、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築推進事業を進めています。地域包括ケアシステムでは、自己による管理、予防、つまり自助と制度によらないボランティアやピアサポートなどの互助が重視をされています。

その考えを全面的に否定はしません。しかし、歴史的に精神患者や障害者の処遇は国による明治時代の自宅での座敷牢での監置、病院などではなくて、家族の監護から始まって、戦後は長期入院隔離政策が行われてきました。

先日、家族会主催で、松沢病院の初代院長の呉秀三を取り上げた映画が上映をされました。区長を初め、松本障害福祉担当部長も出席をされたと聞いております。その中で、呉秀三が、自宅監置の座敷牢での監置の実態をつぶさに調査をして、きちんと病院での治療もされていない、そして人権が奪われている、こういった状況でいいのかと国に訴えたと、そういった内容です。こういった意見の表明ですとか、それから人権が尊重されない、こういった歴史が精神患者、障害者の処遇についてはあったと思います。

私も松沢病院の看護師時代、そうした患者さんを多く見てきました。二十代、三十代の若いころ入院し、そのまま病院で二十年、三十年、四十年の長期入院、家族交渉は全くなく、病院で一生を終えたり、近年の入院日数削減、社会復帰の高まりから、七十代、八十代になり、長期療養が可能な別の病院に転院していく方たちもいました。

どうしても精神疾患があると、特養ホームなど、そういった施設ではなかなか受け入れてもらえない。やむなく、もう一つの違う病院に入院をするということで、そこで一生を終えられるということです。根深く残る偏見や受け皿不足なども実感してきました。

精神障害者が地域の一員として安心して自分らしい生活ができるよう、国、自治体による予防啓発、また制度や差別の解消、さらに地域の基盤整備など、地域生活を支えるさらなる取り組みが不可欠です。

私はこの観点から、今般、区から示された国の精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築推進事業に対する区の対応について二点伺います。

一点目は、施策に当事者と家族の参画を進めることについてです。
この事業は、保健、医療、福祉の協議の場の設置やアウトリーチ事業、また住まいの支援など十事業で構成をされています。中でも医療者が家庭を訪問し、支援を行うアウトリーチ事業については、当事者、家族からも地域生活を支える有効な施策として実現が強く望まれ、議会でも多くの会派が求めてきました。

今般、区より来年度から世田谷保健所に多職種チームによる訪問支援事業の実施、さらに心の相談機能整備として、平成三十二年度から梅ヶ丘の区立保健センターで、平日夜間、休日の電話相談窓口整備の方向性の案が示されました。
家族会の方からも早速喜びの声が届いています。一歩踏み込んだ内容で、いい意味で驚いている。区が相談支援をすることに大きな信頼感がある。では、電話をしてみようかと思う。平成三十二年から電話相談窓口整備の方向性とはっきり書かれ、とてもうれしかったなど、こういった声を伺っています。今般の区の施策案を評価するものです。

同時に、家族、当事者からは、訪問支援の二十四時間三百六十五日対応の必要性が求められてきました。私も先駆的にその実践を行っている区内芦花特養ホーム内の訪問看護ステーションや所沢市保健所が委託実施しているアウトリーチ事業などの視察を行い、その必要性を訴えてきました。

区はこの間、医療・福祉関係者などから成るこころの相談機能等の強化検討専門部会による検討を行い、その見解として、二十四時間対応では相談者の生活リズムの乱れや依存性が高まることなどの指摘があるとしました。こうした専門部会の検討は尊重されるものであると考えます。
しかし、当事者や家族が受ける施策、サービスにおいて、その参画と意見反映を今後どのように実現、保障していくかが重要です。具体的には、来年度から訪問支援などがより多くの障害者、御家族に役立てられ、地域生活の支援、定着、社会復帰の大きな力となることが期待をされています。区としての努力と工夫を大きく期待するものです。

ここで伺いますが、今後、訪問支援を初め精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築推進事業に当事者、家族の参画をどう進めていくのか区の見解を伺います。

鵜飼 健康推進課長

区は、精神障害者等の家族の皆様と意見を交換する機会として、毎年懇談会を開催しております。
今年度開催した懇談会では、区が準備を進める精神障害者を対象とした多職種チームによる訪問支援事業に対し、委員のお話にありましたとおり、精神障害者等は、夜間、休日に精神状態が不安定となることも多く、いつでも相談や支援を受けられる体制整備を望むとの御要望を伺いました。
早速、先ほどお話にありましたこころの相談機能等の強化検討専門部会に家族会から伺った御要望もお伝えし、議論いただいたところでございます。

現在、精神障害者にも対応した地域包括ケアシステムの構築推進事業への対応といたしまして、地域の医療や相談支援団体等の関係者で構成する保健、医療、福祉の協議の場の設置に向け準備を進めております。こうした場にも、家族会等の御意見をお伝えすることは重要なことでございますので、引き続き家族会の御意見等を適宜伺うことに加え、協議の場への傍聴や意見を伺う機会を設けることなどにつきましても検討してまいります。

江口じゅん子

これまでも家族会などから意見聴取をして反映してきたということです。ぜひ当事者、家族のこうした意見表明、それから参画、そのことについて一歩進めて、工夫もしていただき、ぜひこれを実現していただきたいと要望します。

そして二点目は、訪問支援事業についてです。
ある御家族からお話を伺いました。精神疾患を持つ弟を二十四時間介護をしているが、入院中の隔離、拘束が医療への大きな恐怖となっていて、弟のほうが医療機関の受診を強く拒否していると、こういうことでした。そして家族としても、入院中の拘束など、こういったことへの疑念があって、今は訪問診療を使いながら何とか在宅生活を続けている。しかし、弟の介護で自分の自由時間は数時間、睡眠も満足にとれない、こういった家族がまだまだ多いのが現状、区の訪問支援を待っている家族はたくさんいる、多くの方に使われるよいものにしてほしい、こういった御意見をいただきました。

訪問支援がより多くの障害者、御家族に役立てられるためには、訪問チームの体制の充実と、それを担う専門職の質の確保が必要です。

今でも多くの役割を担っているチームの核となる保健所の保健師、そして現場で連携をとる支所の地区担当保健師の充実が必要です。さらに、チーム構成員としては、実際に家庭訪問をし、直接の相談支援を行うのは、精神保健福祉士などを想定していると聞いております。しかし、御家族からは、精神保健福祉士のなじみが余りなく、どんな仕事をしているのかわからない、看護師のほうがなじみやすい、こういった声も聞かれています。

多職種チームの構成においては、区内に大きな精神科病院や精神の地域資源が豊富なこの世田谷区の利点を生かして、区としての情報や人脈も活用し、長く精神医療、看護に携わってきた看護師、精神保健福祉士などの確保を求めます。

訪問支援の体制充実と専門職の質の確保が必要です。区の見解を伺います。

鵜飼 健康推進課長

区は、精神障害者施策の拡充を目的に、精神障害者とその家族が地域の一員として安心して暮らしていけることを目指し、平成三十一年度より多職種チームによる訪問支援事業、いわゆるアウトリーチ事業の実施を予定しております。

体制等につきましては、世田谷保健所に、保健師及び精神保健福祉士や専門医師等で構成する多職種チームを設置いたします。また、チームの構成員を総合支所、保健福祉センターへ定期的に派遣し、地区担当保健師等と連携を図り、アウトリーチ事業に取り組む予定でおります。そのため、詳細運用等については関係所管と調整を進めているところでございます。

なお、精神保健福祉士以外の職種の登用につきましても現在検討を続け、人材の確保等に努めてまいります。

江口じゅん子

アウトリーチを行う専門職の方、やはり経験がきちんと求められると思います。ぜひそういったところを勘案して、質のよいサービスの提供を要望したいと思います。

そして、この質問の最後ですが、家族からはアウトリーチとはどういう意味ですかと聞いております。先ほどの家族の例のように、本当に支援を必要とする当事者家族は、病状からまた当事者への対応に追われ、情報を得ることができない状況にあることを区も理解されていると思います。

この区の取り組みを広く知ってもらうためには、ネーミングを含め、この事業を必要とする家族当事者に広報、啓発の工夫、これが求められます。区の見解を伺います。

鵜飼 健康推進課長

現在、区が想定しているアウトリーチ事業につきましては、当事者、また対象者も十分にわかっていただけるよう、周知や事業にふさわしい名称につきまして、関係所管とも検討してまいります。

また、その結果等につきましても、家族会等を含め、関係機関等へ周知してまいります。

江口じゅん子

アウトリーチというふうに私たちは使っていますけれども、やはり一般の方にはなかなかなじみがないというのが実態だと思います。訪問支援隊とか、やはり日本語のわかりやすい表記、そういったネーミングも含め、ぜひ広報、啓発、工夫を重ねて求めます。

児童虐待予防における一歳児ショートステイについて

江口じゅん子

それでは、最後に、児童虐待予防における一歳児ショートステイについて伺います。

さきの我が会派の代表質問において、平成三十二年度早期の区立児相設置を目指す当区として、予防から措置、保護に至る各段階での体制や施策の充実を求めました。特に東京都における人的、財政的の支援は不可欠と考えます。

我が党は、開設時期を定め、準備は行うが、子どもの命と権利の保護が何より重要であり、それにふさわしい体制、施策が担保できないのであれば、開設時期の柔軟な対応も必要と考えております。

以上の立場から、早期の予防支援としての赤ちゃんショートステイの充実を求め、伺います。
赤ちゃんショートステイは、ゼロ歳の乳児を対象に、親の疾病、出産などでの入院や育児疲れ、体調不良などで育児困難などを理由に、広尾の日赤医療センター附属乳児院で短期間の預かりを実施する事業です。

ここで伺いますが、児童虐待予防の観点でのこの事業の必要性と、そして現状について伺います。

松本 子ども家庭課長

現在、一歳から十二歳までの子どものショートステイを福音寮に、ゼロ歳児の赤ちゃんショートステイを日本赤十字社医療センター附属乳児院に委託して実施しております。

赤ちゃんショートステイにつきましては、一歳未満のサービスが少なかったことから、平成二十三年度の要保護児童支援協議会の周産期部会で、ゼロ歳児の養育支援が必要な家庭への支援をテーマに検討を行いました。
そこで、子どもと離れられる場を提供することが必要との御意見をいただき、平成二十四年度から赤ちゃんショートステイの事業を開始いたしました。
赤ちゃんショートステイの昨年度の実績を見ますと、保護者の出産、入院によるものが二五・六%、母親の育児疲れ、不安の解消が六四・六%となっており、毎年ほぼこの二つの要件により御利用されております。

今までは出産、入院で子どもを預ける必要が生じた場合、児童相談所に相談する必要がありましたが、赤ちゃんショートステイを実施したことで、身近な地域の子ども家庭支援センターに相談し、一時的に子どもと離れ、育児不安や負担の疲れが軽減され、児童虐待の未然防止となっていると考えています。

江口じゅん子

母親の育児疲れ、不安の解消が約六五%と本当に利用者にとっては児童虐待予防、未然に防ぐ休息、そういった大きな効果があるというふうに認識をしております。

一歳児以降の子どものショートステイ事業については、今御答弁にあったとおり、十二歳までは区内の児童養護施設福音寮にて行われています。この間、会派で福音寮の視察や他自治体の児童養護施設の方からお話を伺ってきました。
児童養護施設は、幼児から青年期までの各世代の子どもたちが二十四時間生活し、定員はほぼいっぱい、複雑困難化する対応が求められるケースも多い中、一歳児の入所があるとそこに人員を割かねばならず、衛生面、安全面においても課題があると伺っています。

より安全安心で年齢に応じたふさわしい環境で生活ができるよう、この改善を求めます。区の見解を求めます。

松本 子ども家庭課長

もともと児童養護施設は、おおむね二歳からの児童を対象とした施設であるため、ショートステイで一歳児をお預かりする場合、委員指摘のとおり、環境面や安全面等、学齢期も含めた複数の子どもとの共同生活において特段の配慮が必要となっておりました。
そのため、三十一年度から乳児院での赤ちゃんショートステイの対象年齢を一歳児まで拡大することを検討しております。

江口じゅん子

ぜひ最適な環境整備を図っていただきたいと要望し、日本共産党の質問を終わります。

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