平成28年第3回定例会 本会議 一般質問

2016年09月15日 江口じゅん子区議

聴覚障害者の権利保障について

江口じゅん子

通告に従い質問します。
まず、聴覚障害者の権利保障についてです。
本年四月に障害者差別解消法が施行されました。障害者差別をなくす目的の法律が施行されたのは、重要な一歩と考えます。施行を踏まえ、区の障害者施策のさらなる推進を求め、以下伺います。
平成二十七年四月時点で、区内の聴覚・平衡機能障害の身体障害者手帳所持者は千九百四十八人います。聴覚障害者には、先天性、幼少期に失聴した聾者、中途失聴、難聴者がいて、コミュニケーション手段は、手話、口話、筆談などさまざまです。全日本ろうあ連盟は、聴覚障害者にとっての差別とは、聞こえる人と比べて周囲とのコミュニケーションがとれず、コミュニケーションバリアや情報格差に起因していることが多い。また、東日本大震災では、防災無線が聞こえず、津波で亡くなった聴覚障害者が多くいたと報告をしています。
障害者にとってバリアや格差があることは、震災などの非常時では生存や権利の侵害に直結します。当区においても、平時から全ての障害者に対して、まず「区のおしらせ」、広報が情報提供されるよう、障害特質に応じた配慮や工夫が必要です。区の認識を伺います。
先日、私は、「区のおしらせ」を読んでも内容がよくわからないという聾者がいるという声を聞きました。これに関して、東京都聴覚障害者連盟は、先天性または幼少期に失聴した聾者の場合、口話――つまり口の形で言葉を読み取る――の場合はある程度しゃべれるようになりますが、コミュニケーション手段としては問題が多いため、母語――つまり日本語――の確立がなかなか難しく、その結果、学力が低くなったり、文章の読み書き能力に若干問題が生じることがあります。特に、高齢聾者は十分な言語獲得環境がなかったため、文章の読み書きが苦手な人が多いようです。また、これは主に聾学校出身の聾者に見られる傾向と説明をしています。全ての聴覚障害者への情報提供には配慮と工夫が必要です。これは、これまでも議会でほかの会派が求めています。「区のおしらせ」に手話と字幕をつけて、区のホームページに動画配信することを求めます。区の見解を伺います。
聴覚障害者の権利保障を具体的に進めるために、手話言語条例制定が必要と考えます。既に区議会では平成二十六年十月、手話言語法制定を求める意見書が全会一致で可決されました。意見書では、手話が音声言語と対等な言語であることを広く周知し、聞こえない子どもが手話を身につけ、手話で学べ、自由に手話が使え、さらには手話を言語として普及、研究することができる社会環境を整備することが求められていますと書いてあります。国の法整備を待つのではなく、区として条例制定の検討を求めます。
区長は、聴覚障害者の情報保障の環境整備などを進める全国手話言語市区長会に参加をされています。聴覚障害者の権利保障に向けた総合的な対策が必要です。区長の認識を伺います。

保坂 区長

江口議員にお答えをいたします。

聴覚障害者の権利保障について、また、手話言語条例、あるいは聴覚障害者の権利保障に向けた総合的な施策ということで御質問をいただきました。
障害の有無にかかわらず、誰もが住みなれた地域で自分らしい生活を安心して継続できる社会の実現は、平成二十七年三月にまとめましたせたがやノーマライゼーションプランの基本理念でございます。毎年、聴覚障害者団体の皆さんから施策に関する要望をいただいておりまして、中でも、災害時の情報入手の保障と、あるいは手話の普及など、盛り込まれているところであります。聴覚障害の皆さんにとって、情報の取得やコミュニケーション手段の確保が大変大きな課題であると受けとめております。
このうち、コミュニケーション手段としての手話の普及につきましては、平成二十六年区議会におきまして、手話言語法制定を求める意見書を決議していただき、国会及び政府に対して提出をされていますが、最近では、全国の自治体で手話言語条例制定の動きが広まっており、本年六月には、全国手話言語市区長会が発足をいたしまして、私もメンバーとして参加しているところであります。
世田谷区でも、この条例整備をという御質問ですが、既に調査検討を指示しております。ただ、同じ手話を対象とした条例でも、自治体によってさまざまな内容があるようでございます。条例の内容やその効果などを十分に調査して、実りあるものにしたいと考えております。また、手話普及の点では、手話講習会を開催しており、毎年、多くの方に受講をしていただいています。
聴覚障害者の権利保障に向けた総合的な対策については、現在、手話通訳者の育成と派遣、要約筆記者の派遣など、手話に限らず、円滑なコミュニケーションの確保に取り組んでいるほか、障害者関連の事業者や障害者団体と連携した災害時の避難行動要支援者の安否確認の方法など、他の御要望も含め、聴覚障害当事者の皆さんと丁寧に意見交換を積み重ねながら施策の充実に努めていく所存でございます。

板谷 政策経営部長

私からは、聴覚障害者の権利保障について、障害特質に応じた配慮や工夫に関して広報部門におけるその必要性の認識、また、聴覚障害者向けの動画配信にまとめてお答えをいたします。
初めに、障害のある方への広報、情報提供のあり方についてですが、障害者差別解消法の掲げる理念を踏まえ、障害のある方それぞれのさまざまな御事情や特質に配慮しつつ取り組んでいかなければならないものと認識をしております。
次に、聴覚障害のある方への情報発信についてですが、区では、これまでも動画広報として、手話や字幕つきの動画を区ホームページを通じて配信するなど取り組んできたところです。御指摘の手話や字幕などを含む動画配信を通じた情報発信のさらなる充実につきましては、技術的な課題などを検討するとともに、聴覚障害当事者の方々の御意見などもお聞きしながら、具体的な研究を進めてまいります。
以上でございます。

世田谷版ネウボラ推進のため、保健師などの増員について

江口じゅん子

次に、世田谷版ネウボラの推進のために、保健師などの増員を求め、質問します。
七月から五カ所の総合支所健康づくり課にて世田谷版ネウボラが始まり、八月末の時点で千三百二十二人の妊婦さんが妊娠期面接を受けました。私は、この間、一貫してネウボラの設置、推進を求めてきました。それは、私自身が産後鬱を経験し、区の保健師などの支援や産後ケアセンターも利用し、区の手厚い産後支援のおかげで元気を取り戻すことができたからです。
産後鬱は決して特別な病気ではなく、大きな原因に産後の急激な女性ホルモン低下があります。昨年の成育医療センターの研究では、産後二週間の産後鬱陽性者は四人に一人になると報告をされています。さらに、今、多くの母親が育児がつらい、子育てで孤立を感じています。背景には、核家族化などで身近に子育ての悩みを相談できる人がいない、また、区内の第一子を出産する母親の約四割が三十五歳以上であり、これまでの生活とのギャップや育児への戸惑いが強いなどがあると考えられます。世田谷版ネウボラも、こうしたことから、全ての妊産婦と子育て世代が対象となっており、ふさわしい人員増が必要です。
先日、会派で総合支所のネウボラの視察を行いました。この支所のネウボラチームは、健康づくり課保健師が十一名、チームリーダーも担います。非常勤の母子保健コーディネーターは二名で妊娠期面接を行い、非常勤の子育て応援相談員は二名で、保育や産後ケアの案内などを行います。
保健師やコーディネーターからお話を伺いました。今の人員体制だと、例えば全数面接は予約があればこなせるが、実際はほとんどが予約なしで来所するので現場が大変、体調不良などで来所できない妊婦さんには、保健師などが入院先や自宅に訪問し、面接を行うが、それ以上のアウトリーチを行うには人員が足りないなど伺いました。
世田谷版ネウボラの推進のためには、母子保健コーディネーターの増員と核となる保健師の計画的かつ継続的な確保が必要です。区の認識を伺います。

辻 世田谷保健所長 

私からは、世田谷版ネウボラの推進のためには、母子保健コーディネーターや核となる保健師等の動員が不可欠だが、区の認識と対応方針はとの御質問にお答えいたします。
この七月からスタートしました世田谷版ネウボラの一環として、保健師、母子保健コーディネーター、子育て応援相談員から成るネウボラチームを各総合支所に配置し、妊娠期の面接相談を初め、子育て家庭に寄り添いながら、切れ目ない支援として、出産、育児などの不安や悩みの相談に対応しています。
妊娠期の面接では、母子保健コーディネーターが妊婦のさまざまな相談に応じるとともに、必要に応じ、支援プランを作成しております。また、産前産後のサービスに利用できる子育て利用券を配付し、妊婦やその家族に寄り添って、新たな家族を迎える準備を進めています。今後は、今年度の相談状況を検証しつつ、妊娠期面接のより一層の充実や面接機会の拡充等を踏まえ、母子保健コーディネーターの増員を進めてまいります。
さらに、区、医療、地域が連携し、切れ目なく子育て家庭を見守り、支援していけるよう、ネットワーク体制の構築を検討してまいります。その検討の中で、核となる保健師の役割や体制を見直し、地域の相談体制の充実を図ってまいります。
以上です。

子どもの相対的貧困について

江口じゅん子

最後に、子どもの貧困、特に相対的貧困について質問します。
八月、NHKのニュース7で、子どもの貧困に関するイベントに当事者として発言を行う女子高生を特集した報道が行われました。その後、この高校生をめぐり、実際は貧困ではないのではないかなど、ネット上で議論が炎上しました。私は、リアルタイムでこの報道を見ました。母子家庭で暮らすこの高校生は、学費が工面できず、進学を断念しなくてはならないということです。最後に、イベントで高校生は、お金という現実を目の前にしても諦めさせないでほしいです。その人の努力に見合ったものが与えられて、手にできる、そういう世界であってほしいと大勢の前で語りました。私は、自分の言葉でしっかり語るその姿に感動を覚えました。しかし、その後、この高校生のツイッターの投稿から、千円のランチを食べた、コンサートに行ったことなどが明らかにされ、前述したバッシングにつながりました。
日本の子どもの相対的貧困率は一六・三%、六人に一人が該当し、先進諸国の中でも最低水準となっています。相対的貧困率とは、OECDの作成基準に基づくもので、国民の所得中央値の半分を貧困線と定めています。日本における所得中央値は二百四十四万円、その半分の百二十二万円が貧困線です。つまり、日本では月約十万円で暮らす世帯の子どもが六人に一人存在するということです。
また、貧困には、絶対的貧困と相対的貧困という概念があります。絶対的貧困とは、生きるための衣食住が絶対的に欠けている状態です。一方、相対的貧困とは、その社会全体の通常の生活レベルを享受できない状態です。さきの高校生の事例で言えば、生活をやりくりすることで、時には千円のランチを食べ、コンサートに行くこともあるでしょう。衣食住は満たされており、絶対的貧困状態ではないと考えます。しかし、経済的事情で進学を断念することは、現在の日本では相対的貧困状態であると考えます。
相対的貧困は、見た目では判断できず、生活実態は見えにくい、さらに、多くの方々は絶対的貧困と相対的貧困の理解が十分でないと考えられます。今回のバッシングの背景には、このようなことがあったのではないでしょうか。区としての相対的貧困に対する認識を伺います。
相対的貧困は、その社会や地域の実情により、貧困のあらわれ方が異なります。大阪市は、平成二十六年に市立小五、中学二年生の子どもと保護者を対象に、貧困が子どもにどのような影響を与えているかを明らかにする大阪子ども調査を行いました。私はこれを読み、子どもの相対的貧困像がよくわかると思いました。例えば、物品の所有では、貧困層であっても携帯電話は持っている。しかし、自分だけの本、子ども部屋、インターネットパソコン、勉強机を持っていない子が多い。将来の夢では、貧困層の子どもでは「ない」の割合が多い。子どもの自己肯定感では、貧困層の子どもでは、自分に対する肯定的評価の割合が低い。大卒以上の教育に関してでは、貧困層では、受けさせたいが経済的に受けさせられないと多く回答しています。区内の子どもの相対的貧困の現状把握のため、実態調査を求めます。区の見解を伺います。
以上で壇上からの質問を終わります。

中村 子ども・若者部長

私からは、子どもの貧困、特に相対的貧困について二点お答えいたします。
まず、相対的貧困に対する区の認識についてです。
国が平成二十六年八月に策定した子供の貧困対策に関する大綱には、我が国の子どもの貧困が先進国の中でも厳しい状況にある中で、子どもの貧困対策を総合的に推進するに当たり、関係施策の実施状況や対策の効果等を検証、評価するための指標の一つとして、子どもの相対的貧困率を位置づけ、その改善に取り組むこととしております。
子どもの相対的貧困率は、それぞれが属する社会の大半の子どもたちが当然のことと捉えている利益や機会を得ることができない子どもたちの割合を示すもので、日本を含む世界の大半の先進経済国で用いられています。子どもの貧困対策は、子どもの将来が生まれ育った環境によって左右されることがないよう、必要な環境整備と教育の機会均等を図り、国の施策と連動しながら、総合的に取り組んでまいります。
次に、区内の子どもたちの相対的貧困の現状把握のために実態調査を行うべきという質問です。
区は、子どもの貧困対策を進めるに当たり、子ども計画策定時に実施したひとり親家庭や小学校から高校生世代を対象としたアンケート調査に加え、ひとり親家庭や生活困窮家庭の学習支援事業であるかるがもスタディルームに参加しているお子さんに、生活改善、関係改善、生活充実度、自己実現など、子どもの生活にかかわるアンケート調査を定期的に実施し、子どもたちの生活実態の把握に努めているところです。
また、東京都は今年度、首都大学東京と協働で、小学校五年生、中学校二年生、高校二年生などを対象に、子供の生活実態調査を行っております。その調査結果が今年度末には公表されると聞いておりますので、この調査結果も参考にしながら、区の既存のデータ等も活用して、全庁横断的な体制で必要な施策の検討を進めてまいります。
なお、現在の子ども計画の後期計画を策定する際に行うアンケート調査においては、東京都や他自治体の調査項目なども参考に、子どもの貧困の実態把握の方法を検討してまいりたいと考えております。
以上です。

再質問

江口じゅん子

子どもの貧困について再質問します。
今、部長の答弁で実態調査を行ってほしいということに対し、現在の子ども計画の後期計画を策定する際に検討したいというような御答弁でしたけれども、これは後期計画を策定する際はいつなんでしょうか。昨日、我が党の代表質問で桜井議員も述べましたが、来春卒業予定の高三生、生活保護を受けている高三生は四十九人いるわけです。今、本当に判断して、対策を立てる必要があると思います。いかがですか。

再答弁

中村 子ども・若者部長

再質問いただきました。
次期の子ども計画は、三十二年四月にスタートに向けて検討を行う予定になっております。その際には、ひとり親ですとか、小中学校生に対するアンケート調査、また、現在、再見直ししています保育所や子ども支援事業に関するニーズ調査など、一連の調査を実施する予定です。この中で、子どもの貧困の実態の把握も改めてしてまいりたいと考えております。現段階としては、先ほど御答弁したとおり、既存のデータですとか、かるがもスタディルームの子どもたちの定期的な状況のアンケート調査、これらを活用して施策のほうにつなげてまいりたいと考えております。
以上です。

 

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