平成27年 決算特別委員会 補充質疑・採決
2015年10月16日 江口じゅん子
殿山横穴墓群の保存について
江口じゅん子
私のほうからは、このパネルでわかりますように、文教所管での質疑の続きで、殿山横穴墓群の保存を求めて質問します。
この決算特別委員会を通して、多くの会派から保存を求める質疑が行われました。区民の保存を求める声がいかに多いか、その反映だと思っております。さきの文教所管において区が調査した二基の横穴墓の評価を伺いましたが、大変重要な見解だと思いますので、改めてお伺いします。
進藤 教育政策部長
今回発見されました殿山横穴墓群についてでございますが、まず横穴墓は六世紀から七世紀にかけて築造された墳墓でございまして、崖線に複数の横穴墓が集中して築造されるという特徴が見られております。世田谷区内では、これまで、今回の殿山横穴墓群を含めて二十四カ所の横穴墓群で、百四十四基の横穴墓が確認されております。
殿山横穴墓群は、六世紀後半から七世紀にかけて築造されたと考えられる横穴墓群で十七基の横穴墓が確認され、発掘調査されることで、配置や構造の様子がよくわかる事例です。横穴墓群の規模としては、区内で見られる他の横穴墓群と同程度の規模であり、調査により確認された構造や出土品についても同様のものと考えております。
横穴墓等の史跡は、地域の歴史を示す文化財であり、その保存については所有者の御理解が必要ですので、教育委員会といたしましては、事業者である国及び中日本高速道路株式会社に対し、保存について検討してほしい旨を要望しているところでございます。
江口じゅん子
横穴墓は、単独で存在することはまれで、おおむね複数から成る墓群を構成しております。後ほど詳しく触れますけれども、今、部長が御答弁されたように、この十七基が一度にまとまって発見されたこの学術的意義は大きいというふうに考えております。また、この墓群は地域の集落の長であることからも、部長の今おっしゃられたとおり、地域の歴史を示す郷土史教育の重要な資料と考えます。今、部長のほうからも国に保存の要望をしていったと。同時に、私のほうから文教所管では、口頭で要望されているということなので、文書などでの要望、これも踏まえて今後も保存を求めていただきたいということを改めて要望しますが、いかがでしょうか。
進藤 教育政策部長
ただいま申し上げましたように、さまざまな機会を通じて、私どもとしましては御要望してまいりたいというふうに考えています。
江口じゅん子
よろしくお願いいたします。
それで、私は、この間、殿山横穴墓群の評価について、例えば見学会では、東京都埋蔵文化財センターの学芸員などから評価を聞く機会がありました。そこで説明されるのは、今、部長もおっしゃられましたが、横穴墓として一般的なものだと。また、これまで区内では百四十四基の横穴墓が見つかったと。例えば近くの西谷戸横穴墓群では三十三基も見つかりましたと言われまして、あたかもこれは珍しくないですといった説明をされるわけなんです。
そこで、三十三基も出た西谷戸横穴墓群についてちょっと調べたいと思いまして、所管から四冊の発掘調査記録をお借りし、読んでみました。これです。なぜ四冊もあるかということなんですが、実はこの横穴墓群は一九六七年の第一次から一九九九年の第七次の三十二年間にわたって発掘調査が行われたからです。遺跡が出た場所は、殿山のように一カ所で十七個ではなくて、大蔵四丁目と岡本三丁目にわたり、広範囲にわたっているんですね。
ちょっと長い説明になるのですけれども、ぜひ聞いていただきたいんですが、その西谷戸横穴墓群のこの四つの調査報告の経過を見ますと、まず第一次は、一九六七年、岡本三丁目に東名高速の開設に伴い六基が確認をされました。第二次は、一九八〇年、岡本三丁目の集合住宅建設に伴い事前調査によって六基確認、三次は、八七年、二次と同場所で自主保存されていた横穴墓が工法上破壊されることになったので発掘調査を行った。四次は、一九九五年、岡本三丁目、集合住宅建設に伴う事前調査、七基確認、五次は、九七年、これも岡本三丁目、共同住宅建設に伴う事前調査四基確認、六次は、九九年、大蔵四丁目、下水道工事に伴う発掘調査六基確認、七次も、同じく九九年、岡本三丁目の住宅建設に伴う事前調査で四基確認と、実は発見された場所、時間がさまざま異なりまして、以上をもって三十三基の西谷戸横穴墓群となったわけです。ですから、今回、この殿山横穴墓群が十七基一度に発掘されたこと、これは確かに学術的意義があるわけです。
西谷戸横穴墓群、どういったものが出たかということも調査結果に詳しく書いてあります。例えば第二次の調査では、奥の壁に沿って構築された高棺座というものが発見されました。棺座というのはひつぎをおさめる場所のことで、これは所管に聞いたんですが、高棺座というのは、それを一段上げてひつぎをおさめる場所ということです。この高棺座というのは、調査記録によると、多摩川流域の左岸ではほとんど報告例がなく、特記に値すると言えるとありまして、大変価値のある横穴墓が出土したということがわかりました。また、四冊の報告書では、それも含めた三十三基全ての横穴墓について、内部構造ですとか、また子どもなども含めた人骨が出たとか、副葬品などなど、出土に関して詳細に学術的検証が行われています。
私は、報告書を読んで、どれも世田谷の古墳時代を現代に伝える貴重な資料だったということを実感しました。殿山横穴墓群も決して一般的なものではなく、区として郷土の歴史を伝える大変重要な史料であると考えます。
この三十三基の西谷戸横穴墓群というのは、もちろんもう既にありません。これらも含めて、区内でこれまで見つかった百四十四の横穴墓も残っているのはただ一つ、等々力渓谷の三号横穴墓だけです。
ここで、先ほど示した報告書、これは西谷戸横穴群Ⅲという六次調査の報告書なんですが、ここに、初めに大変重要なことが書かれているので、ちょっと読みたいと思います。さて、区教育委員会では、埋蔵文化財の保護、普及活動に努めていますが、その一端として、開発事業に先立ち、事前の発掘調査を実施しています。この発掘調査は、開発によってやむなく破壊されると判断された場合に行い、それによって遺跡を記録し、そうすることで最小限の保存を図るという考え方によっています。いわば物のかわりに記録を残すという考え方です。日ごろ目にすることの少ない遺跡も私たちの大切な文化遺産です。今後も地道に調査を続けていくことによって、世田谷の古代の姿が明らかになっていきます。自然環境の保護とともに、これからも力を入れて取り組まなければならない課題と言えます。一九九九年九月十八日、世田谷区教育委員会ということで書かれております。
区内の横穴墓などの埋蔵文化財は、開発とともに発見をされ、同時にそれとともに消えてきた歴史とも言えると思います。残ったのはこうした記録などによる保存です。殿山横穴墓群もそうなるのかと大変危惧されています。多くの住民は保存を願っています。
この十五基、全部で十七基なんですが、二基はもう既に区が調査して埋め戻されておりまして、この十五基の横穴墓の調査は、東京都埋蔵文化財センターが委託を受けて行っております。調査は十月中に終了予定と聞いております。地元では、今、町会など、区内、区外の十四団体が賛同する殿山横穴墓群の保存を求める会がつくられまして、署名活動や区長宛てに要望書を提出したと聞いています。先日代表の方にお話を伺いましたところ、署名をうちのお店に置いてくださいとか、見学会はまだやっているんですかとか、問い合わせがいまだにあるということで反響があると聞いております。そして、地元住民から殿山遺跡に関する陳情も先日、区議会に提出されたと聞いております。
ここでぜひ区長に見解をお伺いしたいんですけれども、郷土の宝として国や事業者に殿山横穴墓群の保存をぜひ求めてもらいたいと要望しますが、見解をお聞かせください。
保坂 区長
今、江口委員の御紹介なさったこの殿山横穴墓群についてですが、私も板垣副区長と一緒に、ちょうどこの公開の前日ですか、九月二十五日に、小雨の中でしたけれども、見てまいりました。大変規模が大きいこと、またその全部ではありませんが、一部から出てきた副葬品であるとか、剣であるとか、たくさんの古代からの、古墳時代にここにたくさんの人々が暮らしを営んでいたという生きた歴史を感じたわけです。
そこで、その場でこれは何とか残すことはできないんだろうかと、考えてみてほしいというようなことも口頭で言いましたけれども、先日、十月九日に国の外環事務所長及び中日本高速道路株式会社の方に世田谷区役所に来ていただいて、現在どのような状況になっているのか、そしていわば計画、工程はどうなっているのかということで、予定であると、やはりその調査が終わると埋め戻しというような予定だというふうに聞いて、これを何らかの形で残すこと、ここを工夫ができないんだろうかということを改めて申し上げたということであります。
先日、十月十四日には、区民の方から、外環道の工事、こういったことの中で見つかったこの十五の墓群を埋め戻してしまったらもう終わりなので、何らかの対処、こういったことができないだろうかという要望書もいただいています。今後、そういった区民の声、車座集会でも出ましたけれども、耳を傾けながら、その工夫ができる可能性というものを、事業者に問いかけ、またできるだけの努力をしてもらいたいということを申し入れていきたいと思います。
江口じゅん子
区長のほうが、見学された早々からこの保存についてその場で口頭要望されたということですとか、この間、事業者をお呼びになって具体的に要望されたということを聞きまして、本当に地元の方のみならず、区民の方、喜ばれると思います。今までは、発掘とともに、開発とともに潰されてきたわけですから、これを郷土史教育、後世に伝える大切な宝として、引き続き、区長のほうでリーダーシップを発揮してもらい、保存についてぜひ働きかけていただきますことを要望しておきたいと思います。
砧・大蔵地域の公共交通不便地域解消について
江口じゅん子
それでは、最後に、砧・大蔵地域の公共交通不便地域解消を求めて伺います。
私は、この間、この解決を求める地元区議の一人として要望してまいりました。先ほど自民党の石川征男委員からも同趣旨の御質問があり、また、これまで議会では、烏山や桜上水から経堂路線など、不便地域解消を求める質問が全区的に繰り返し行われてきました。区内の公共交通不便地域は一九・六%、区内の面積の五分の一を占めまして、人口に換算すると、概算ですが、約十七万人もの方が住んでいます。しかし、その解消は進んでいません。公共交通不便地域の割合はこの十二年間でたった約三%しか改善をしていません。ぜひとも早急な解決が必要です。
先日、住民団体の方、砧・大蔵交通不便地域解消を考える会という団体さんからアンケート調査を行いましたということで、その報告に基づく要請行動をお受けしました。会の方によると、公共交通特別委員会の委員や地元区議など、各会派に行っているというふうに聞いております。この会は、砧や祖師谷の地域の地元の住民の方でつくられ、アンケートの方法としては、ことし六月から八月にかけて不便地域である砧一、四丁目、大蔵団地を中心に一千百枚のアンケートを各戸配布し、三百八十人から回答を得て、その結果をまとめましたと説明を受けました。回収率は三四・五%とのことです。
ちなみになんですが、区がことし三月策定した世田谷区交通まちづくり基本計画でもそれに向けて区民アンケートを実施しているんです。区民二千五百人を無作為抽出、七百七十一票の回答、回収率は三八%で、住民団体のほうは三四・五%ですから、遜色ない結果なのかなというふうに個人的には感じました。
それで、調査結果を見ますと、回答者三百八十人のうち二百九十一人、実に七六%の方がミニバスなどを運行してほしいというふうに回答しています。年代別で見ますと、三十代から六十代を通じては、運行してほしいが六七%であるのに対し、七十歳以上では、それが八四%にはね上がるんです。この問題が高齢化社会を迎える地域においていかに切実な問題かということがわかります。
アンケートに寄せられたミニバスに期待するという声、大変詳細に紹介をされておりますので、ここで少し読み上げたいと思います。例えば砧一丁目の女性、七十代の方、駅まで歩くと二十分かかり、体調のよいときは歩けますが、買い物が重たいときはタクシーを使います。雨のときは病院に行くのに大変です。ぜひとも駅までミニバスが通ってくれたら、日常の生活に不安が少なくなると思います。ぜひとも開通できますよう願っています。また、砧四丁目の女性、八十代の方、若いときは十分から十五分で祖師ヶ谷大蔵駅まで行きましたが、三、四年前から時間がかかるようになり、現在八十六歳で三十分以上の時間を見ていくことにしています。また、大蔵三丁目、あの大蔵団地です。女性、七十歳の方は、大蔵地域は買い物が不便だし楽しくない。ほとんど毎日祖師谷、ウルトラマン商店街に出向いています。ミニバスを運行してほしいと前から思っていました。ぜひともお願いいたしますと、特に高齢者世代の方はびっしり、ぜひ通してくださいという要望が書かれておりました。
実は子育て世代からの要望も多くて、例えば砧一丁目、女性、四十代の方、自転車が乗れない雨や雪の日に、小さい子が三人いるのでとても不便です。歩かせると時間がかかるし、帰り道は寝てしまったりします。また、祖師谷に住む両親も高齢なので、うちに来るのに歩くと片道四十五分、乗りかえがあったとしても、バス利用ができたら大変助かります。総合運動場や砧公園に行くのにもバスが運行されたら、雨の日は必ず利用しますということで、本当に多くの世代から熱い要望の声がここのアンケート結果として明記をされております。
また、回答者のうち六%が運行の必要がない、一八%がどちらとも言えないと回答もされております。
それで、ここで区に伺いますが、区にもこの調査結果が届けられたと聞きます。受けとめをぜひお聞かせください。
吉田 交通政策担当部長
委員お話しのアンケートにつきまして私も拝見いたしましたが、この地区にお住まいの方が新たなバス路線を一つ必要とされているということについて、改めて認識いたしました。特に高齢の方がバス路線を必要としているということ、それから利用目的として買い物、通院と答えた方が多いということで、日常生活に御不便を感じているということのあらわれであるというふうに感じました。
江口じゅん子 委員
今、部長からの御答弁で、この地域にお住まいの大変多くの方が新たなバス路線を必要とされていることを改めて認識されたというようなことを御答弁されました。特に七十歳以上の高齢者では八割以上の方がバス路線を必要としているということで、日常生活で特に高齢者が御不便を感じているということのあらわれであると、そういった受けとめでした。本当に高齢者にとっては、生活の問題ですし、ひいては介護予防ですとか、そういったことからも、本当に切実な要求だと思うんですね。一刻も早い早期の解決が求められます。
先ほどワンボックスタイプの小型車両導入についての提案もありました。課題である道路幅員問題を解決する大変有効な手段だと思っております。答弁では、導入には区の経費負担が不可欠というようなものでした。また、答弁の中では、コミュニティバスを運行している多くの自治体で運行費、車両購入費などを経費補助しているといった御答弁もありました。部長の御答弁のそのとおりで、私ども日本共産党の都議団の二〇一一年の調査、ちょっと古いんですが、二十三区でコミュニティバスを導入しているのは十五区、そのうち補助金を実施していないのは四区、つまり、中野、荒川、足立、世田谷だけと、こういうふうになっているんです。
区は、これまでコミュニティバス導入に当たって運行補助は行わないとしてきております。しかし、それでは、この公共交通不便地域を解消するための二つ目の課題である採算性はいつまでたってもクリアできないと思います。ですから、この十二年間で不便地域は約三%しか改善していないという状況になっておりますし、このまま同じ十年を繰り返すのか、そこが問われると思っております。
ここで区にお伺いしますが、ワンボックスタイプなどの小型車両導入には区の経費負担が不可欠ということですが、公費負担について前向きに検討してもらいたい。ぜひお願いしたいと思います。区の見解を伺います。
吉田 交通政策担当部長
ワンボックスなどの小型の自動車によるコミュニティバスの運行につきましては、採算が合わないということで、民間のバス事業者の単独の運行では困難なのが実情であると聞いております。そのため、多くの自治体においては、車両運行補助、それから何らかの形で経費を負担しているという状況でございます。
区といたしましては、ワンボックス自動車などの小型のコミュニティバスの導入も含めまして、地域の実情に合った交通手段について、さまざまな角度から今後、検討、研究をしてまいりたいと考えております。
江口じゅん子
ここで区長にぜひお伺いしたいんですが、先ほど紹介しましたアンケートで寄せられた地域の要望、どう受けとめられるのか、また、採算性の問題、これの解決にはやはり区としての決断が必要です。区長、ぜひ経費補助を検討していただきたいと考えますが、いかがでしょうか。
道路計画課長
先ほど石川征男委員からも同様の御質問があって、従来までコミュニティバスをバス事業者が採算をとる中で運行するという考え方でいくと、この地域はそもそも道路の幅員の問題等でそれは不可能であると。まして、ワンボックスということになると、ますますその事業採算性ということでは、残念ながらできないということになりますが、車座集会等でも、ここに今、江口委員が御紹介いただいたような声が出ておりますし、またこの地域だけではなくて、幾つかの地域でそういった声が出ております。交通政策とかけるところの多分福祉政策ですね。高齢者や障害者やあるいは子育て支援というようなところも入るかと思いますが、新たな発想でこの取り組みができるのかどうか、検討してまいりたいと思います。
江口じゅん子
ぜひ区長のリーダーシップを期待しております。
日本共産党の質疑を終わります。
